JavaOne Tokyo 2012 二日目終了と、今後のJavaへの期待

この二日間は久しぶりに Java 漬けとなりました。あまりウォッチしてこなかった Java ME がビジネスとして成熟していると気付かされたこと、Java の言語改訂の方向性(マルチコアへの対応)、Java EE 6 の魅力が高まったこと、Java FX がもし iPad に対応したら... など、「Java に注目していれば、まだまだ何か起こりそうだ」という気持ちを参加者が共有できたのは、とても意義があったと思います。日本でのイベントを企画し、見事に実現されたオラクルの皆さんに、心から敬意を表します。

また初日の夜は、私がこれまで聴講してきた中でも最高レベルのライトニングトークがあり、また二日目の夜はコミュニティで活躍されているリーダーの方々の熱い思いを語る場がありと、技術者中心の会という雰囲気が伝わったこともまた、嬉しく思います。二日目の夜には日本Javaユーザグループ (JJUG)主催の Night Party があり、100名を超える技術者が集いました。このような出会いをとおして多くの技術者がさらに成長することでしょう。私は Java 1.0 の頃から学び始めたため相当に古い世代ですが、今でもこのような場に参加すると刺激されます。

Java EE 6 が良くなっていることへの賞賛と、嬉しい悩み

Java EE 6 の魅力が高まっています。各層をつなぐ DI があり、O/R マッピングをサポートする JPA があり、クラスタリングに対応したキャッシュがあり、アノテーションベースで作成できる Servlet があり、HTML+CSSまたはAjax+JSONというスタイルのいずれも使えるプレゼンテーション技術があります。その他、細かい機能・非機能要件の充実度を加味すれば、要素技術面では Spring ファミリに追いついたようにみえます。アプリケーションサーバも、すぐに試せる GrassFish や JBoss のコミュニティ版があり、かつ商用版も充実しています。今、「Spring + Hibernate + Struts on Tomcat という構成からの移行」というテーマでセミナーを実施すれば、相当の集客が見込めるのではないでしょうか。

しかし一方で、これまで Spring ベース(または Seasar ベース)で構築してきたアプリケーションの開発ノウハウをどうするべきか。両方をカバーするという案はもちろんありますが、今後の新規案件の "主力" をどこにするか、が多くの SIer で悩むところではないかと思います。かくいう当社も私案中です。すぐに Java EE 6 に全力で取り組みます、と宣言できないところは申し訳ありません!... > オラクルの皆さん 

ただ、私を含め多くの参加者に Java EE 6 の存在感を十分、伝えられたと思います。これは嬉しい悩みなのです。

改めて旧サン・マイクロシステムズの偉大さを想う

これらの技術はすべて旧サン・マイクロシステムズが仕掛けてきたものです。Java EE については評価が悩ましい時期もあったのですが、Spring が提案した技術を Java EE 5/6 に取り込むという決断をしたことは正解と思います。そして改めて、Java SE を無償で提供しつづけ、JVM をはじめとする内部の技術も可能な限りオープンとし、複数の OS で動作させるという目標を見失わずに開発を継続できたのは素晴らしいことであると思います。

仮に Java SE に少額でも課金したり、開発したアプリに対して課税?するといった措置をとれば会社は延命できたかも知れません。社内でも相当、いろいろな議論があったと伺っています。それでも最終的にそういった課金をしなかったどころか、Java の一層のオープン化(Open JDK)を実現するに至りました。この企業文化には頭が下がります。会社はなくなっても、技術とコミュニティと文化が残った。この資産価値が世界に与えた影響はあまりにも大きく、その大きさゆえに一社の手で独占することはできなかったのかも知れません。

買収後のオラクル社の動向が注視されましたが、私は今回の JavaOne で、引き続き Java については独占ではなく開放という文化が残っていると感じ、安心しました。故に Java はこれからも IT の基盤として重宝されることでしょう。そして Java のおかげで私は起業し、ソフトウェアをつくり、自分たちが書いたコードが多くのお客様の環境で動作しているという喜びを経験しています。Java に忠誠を誓うというほどかっこ良くはありませんが、少なくとも自分たちが今、ビジネスをしている基盤は何かという点は忘れないようにしたいと思っています。

おまけ

米国からいらっしゃったプレゼンテーター(各技術分野のトップクラス)の方は、皆 Mac を使っていました。普段から Mac を使って開発している... ということで、OS XJava がもっとも洗練されているに違いない、と勝手に安心しました。Java 7 の準備も進んでいるとのこと、楽しみです。