不安と戦いつづける、という覚悟を決めるところから、ものづくりは始まる

さった3月に、元・任天堂でWii企画開発者である玉樹 真一郎氏の講演を聴く機会がありました。
http://www.mijs.jp/section/event/20130306/

タイトルは、ご講演での氏の台詞です。ベンチャー企業経営で合点がいく、いくつもの示唆がありました。

氏は「未知の良さ」とは、直感的に良いと思えない部分が含まれるものだといいます。これは「コンセプト」で掘り出すべきもの、という主張です。つまり未知の良さを見つけ出し、コンセプトに掲げます。

しかし、その未知の良さを見つけるのがいかに難しいかを、次の実例で示しました。

  • 蓄音機に商業的価値はまったくない。(トーマス・エジソン)
  • 俳優の声を聞きたい人などいるわけがない。(ワーナーブラザーズ)
  • 世界でコンピュータの需要は5台ぐらいだと思う。(IBM)

これらは結果的には成功しているわけですが、開発中の当人にとっては常に不安な状態だったことでしょう。
しかし、不安でなければならなかった、ともいえます。開発者が安心した状態とは、新しいことにチャレンジしていないわけですから、技術革新を起こせません。

ここから示せることは、経営者はコンセプトを掲げ、開発者はそのコンセプトを信じきるというチーム構成です。めちゃくちゃなものを作っているとドキドキしている感覚があれば、プロジェクトは成功に近づくのではないか、という考え方には、大いに同意しました。

不安定だから、面白い

私自身の経験から玉樹氏の講演に付け加えることがあるとすれば、それは(不安定な)ものづくりに身を置くのに年齢は関係ない、ということです。給料や安定という報酬よりも、楽しい、ワクワクする、あっと驚かせたいという気持ちを優先させる人生を選ぶのは、実は21世紀型の仕事の基本的な立ち位置になっているように感じます。この「不安定だからこそ面白いのだ」という心を保つには、ある種の余裕が必要でしょう。その余裕の有無こそが、人生を愉しむための鍵になるのではないか、と考えるようになりました。