第16回Wagby分科会 - インフロント様ご発表「製造会社様向け基幹システム構築資料」

さった5月25日(月)に大阪で開催された Wagby 分科会で、インフロント様によるご発表が大いに参考になったので紹介します。
次のリンクにあるスライドをご覧ください。

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http://infrontinc.co.jp/wagby_dev_case_a.html

中堅(利用ユーザー数150名)の製造販売会社様の基幹システム再構築案件に Wagby R7 を適用した事例です。
スタート時点の状況は次のとおりです。

  • かねてより営業、工場の双方に、原価管理を徹底しなければならないという課題があった。また生産指示が紙ベースという問題や、在庫管理が特定の担当者の業務になっているという問題も解決したいと考えていた。
  • そこに輪をかけて、5ヶ月後に組織改変というテーマが持ち上がった。
  • 情報システム部としては、いよいよ「既存システムを大改修して、組織改変に対応する(しかし課題の解決は後回し)」か「この機会に、従来からの課題解決を目指しつつ、組織改変にも対応した新システムを開発する」かを迫られた。
  • トップからの指示は “5ヶ月後のカットオーバーは必達” というものであった。

この前提で新システム開発を選択し、かつ、納期を遵守するためには、これまでの開発手法では無理ということは最初からわかっていました。そこで Wagby にトライすることを決めるのですが、もちろん失敗は許されません。途中までやって、できなかったので別の手法を試すという時間的な余裕は、ありませんでした。

しかしこれは、業務改革を一気に行えるという機会の到来でもあります。情報システム部は千載一遇のチャンスと捉えます。トップからの指示を「5ヶ月で、業務改革を実現する」という解釈にして、全社員を巻き込むことにするのです。

さて(Wagbyにすると決定した時点で)残り開発期間は4ヶ月弱となっていました。販売代理店であるインフロント様もこれを最重要案件と位置づけ、Wagby担当者1名を専属配置し、メーカーであるジャスミンソフトとの窓口として活躍することとなります。

かなりシビアなスケジュールですが、4ヶ月後にシステムは出来上がりました。カットオーバー直後はさすがに混乱したとのお話でしたが、これも優先度をつけて順次対応し、3ヶ月で初期課題を収束させています。このスピード感には、当日の分科会参加者を大いに驚かせました。詳細は是非、上記URLの資料をご覧ください。

当日、私も聴講していましたので、ポイントと感じたことを列挙してみます。

最初が肝心

"設計情報からシステムを自動生成する” といっても、具体的にどういう設計情報を書けばいいのか、最初は戸惑います。そこで同社が採用した方法は、Wagbyのエキスパートをインフロント社から招き、最初の一週間で全体のモデル構成(関連)を描ききったことです。この段階ではモデル項目の詳細はなく、あくまでも登場するモデルの関連を整理するというものでした。

これで全体像が見えました。ここからモデル定義情報をWagbyに設定していくのですが、一ヶ月ほどでプロトタイプが仕上がったので開発者も「いける」という手応えを感じられたようです。

データの起点は「見積」ではなく「受注」から、という発想

多くの販売管理パッケージ製品では、見積=>受注=>請求という流れではないでしょうか。しかし本システムの特徴は、受注が起点であり、そこから見積書が発生します。その理由は、既存顧客からの継続発注が主なため、見積書は受注伝票から起こすのが現場には自然というものでした。

この時点で、ERPのカスタマイズという選択であれば、非常に大変だったことが予想されます。自らデータモデルと業務フローを設計できれば(ERPカスタマイズよりも)Wagbyの方が早い、という好例です。

カスタマイズパターンの洗い出し

Wagbyでは複雑な業務ロジックをカスタマイズコードとして別途、アドオンすることができます。(アドオンしたあとでもモデルの変更作業ならびに再・自動生成は可能です。)今回の案件では、カスタマイズを6つのパターンに分けていることが重要です。それぞれのパターンについて一人が先行して開発し、それを他の開発者が真似るということで効率的なコード開発を実践していました。

真の効果

同社はこの開発経験をとおして、全社レベルで「自分だけの業務」から「自分の仕事が、どことつながっているか」を意識するようになりました。さらに、当初は(おそらく誰もが)無謀と感じていた “5ヶ月後の新システムカットオーバー” を達成したことで、経営トップの強い意志を全社員にアピールすることにつながりました。システムの刷新が、変化を目に見える形で全社員に行き渡らせたのです。この効果は大きいと思います。

システムの主導権は情報システム部にある

同社はこれまでも自社開発でしたが、今回の件でもまた、主導権を維持しています。といっても情報システム部は日々の保守運用に追われながらの作業です。4ヶ月という開発期間に携わった3名のスタッフは決してWagby専任というわけではありませんでした。開発にあたった時間よりも現場との頻繁な調整に比重を置いています。

決して楽な開発ではなかったでしょう。Wagbyの力不足でご迷惑をおかけしたことも、たくさんあります。それでも無事にカットオーバーできたことについて、心から敬意を表します。そしてインフロント様とともに、このような形で外部への発表を許諾いただけたことについて、お礼を申し上げます。

P.S.
インフロントの阿部 悟 様は、2015年5月時点で関西地区で唯一の「Wagbyエキスパート認定技術者」です。