2016年全国ツアーを終えて - 「ユーザー企業 x 超高速開発ツール」がもたらした予想外の効果

7月の熊本からはじまって、福岡、石川、名古屋、大阪、仙台、富山、北海道、福井をまわり、沖縄で終了しました。10拠点でのべ100名以上の方に Wagby をご紹介できたことを嬉しく思います。ご参加いただいた皆様、ならびにご協力いただいたWagby販売代理店の関係者へ、この場を借りて御礼申し上げます。

今回のツアーの締めくくりである沖縄会場では、ユーザー企業4社のご協力をいただき、各社の取り組みを直接、お話いただきました。以前から各社の状況は伺っていたつもりでしたが、Wagbyの活用が深化していることに驚きました。そしてユーザー企業の内製化を突き進めたときの予想外の効果に気づいたので、その話を書こうと思います。

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事例:株式会社リウデン様のご発表

同社は沖縄県内で電気通信設備の保守メンテナンスを行っている地元密着型の企業です。
http://www.riuden.co.jp/index.html

Wagby導入前の課題は次のとおりでした。

  • 顧客管理が個々の営業担当に依存しており、全社で把握できていなかった。
  • 工事履歴を会計年度ごとにExcelで管理していたが、年度がうろ覚えな過去の工事を検索するのが難しいといった運用上の課題があった。
  • 見積システムは導入済みだったが、原価計算機能がなかったため、Excelで別管理しており、手間が増えていた。

これらは多くの中小企業で抱えている悩みでもあるでしょう。
この解決のために Access などで開発するという選択肢もありましたが、5年前に「ノンプログラミングで開発できる」という Wagby の採用を決めました。そして開発担当に任命された友利様は、営業職との兼任という形で関わることになりました。

プロジェクト名を「りうでん管理システム」と命名され、最初のバージョン Ver 1.0 を5ヶ月で開発しました。営業の傍らで Wagby を試していったということです。以来、継続して機能拡張を行い、現在は Ver 4.33 まで成長しています。具体的には顧客管理、案件管理(月次・年次決算と各種統計出力を含む)、見積管理、受注管理、売上請求、入金管理といった業務機能をすべて含み、さらに勤怠管理、外注管理、材料注文、経費精算、車両管理、情報資産管理などもカバーしています。社内業務全般を自社 ERP という枠組みで構築したという規模感です。

データは見事に関連付けられており、クリック一つで流れるように関連データを確認できます。売掛金が与信限度額を超えると見積作成が不可となる、といった細かいルールも実装されていました。

しかし参加者がもっとも驚いたのは、社員が自然に原価管理を意識できるような工夫を取り入れた入出力画面でした。資材購入、外注依頼、仮払といったお金の払いが発生するモデルには常に「原価」の項目が存在しており、社員一人ひとりが日々の業務の中で当たり前のように「この業務は赤か、黒か」を把握できるようになっています。こういうデータ構造と関連性を、特別な経営コンサルタントのアドバイスなしで、自らの気づきをもとに Wagby で定義していった、というのです。

その導入効果まで見せていただきました。「りうでん管理システム」導入以降の経常利益率比較グラフによると、この数年、少しずつ利益率が改善しており、直近の利益率はシステム導入前に比較して 1.8 倍の改善を達成していました。

開発者である友利様の「業務システムの開発については、業務の流れを把握している自社の社員で作る事ができればベストだ。」との言葉は経験に裏打ちされている分だけ、説得力がありました。Wagbyならこのようなストーリーが可能になる、というのは、とても勇気付けられる内容でした。

最大の効果は、社員の意識改革や、利益率の改善の先にあった

私がこの発表を聞いて感じた最大の効果は、中堅の営業職の社員が、システム開発をとおして全社の業務フローを理解し、原価率をどう改善すればいいかという視点を日々の業務に盛り込むことができた、ということです。つまり、システム開発という業務が、貴重な「人財」を育んだのです。

実は、もう一社のご発表である、ゆがふホールディングス様からも、同じことを感じました。こちらはもっと会社規模が大きい(社員数 500 名規模)のですが、やはり一名で全社(全グループ)で利用できるシステム開発を行っています。こちらも会社の「今」を把握できる人財といえます。

これは経営陣にとって重要な意味があります。全社の業務フローを理解し、かつ原価管理という経営者視点まで兼ね備えた人財を今後、どのように処遇するかはとても楽しみなことでしょう。将来の幹部候補といってもいいのではないかとさえ思うほどです。

まとめますと、社内システムの内製開発で全社データを俯瞰できる視点をもつ機会を得ることは、次代の幹部を育成することにつながるのではないか、ということです。特に若手の登用は、経営陣の若返りにも貢献するため、後継者不足に悩む中小企業の切り札にもなりえます。

そして Wagby という、ノンプログラミングで ERP が作成できる基盤があれば、プログラマでなくてもそのような人財になりうることがわかりました。おそらく他のスタッフからも頼られる存在となり、名実ともに社内でリーダー的な存在になっていくはずです。これは大変に面白いと感じた次第です。