工学部危うしという流れを考える

2008年8月18日号の日経ビジネス特集「さらば工学部」を読みました。工学部志望が年々減少する中、各大学や企業における独自の取り組みについて紹介する記事です。その事例は興味深いのですが、なぜ工学部志望が減少したのかという本質的な部分へのメスが浅いという感想を持ちました。

これはIT業界が3Kと言われていることと根は同じだと思います。学生は社会の鏡と言われますが、学生からみた場合、「ものづくり」をしても評価されない、またはものづくりよりもビジネスモデルが重視される時代であることを敏感に感じ取っているのではないでしょうか。

IT業界についても、受託開発やパッケージビジネスは地味であり、今はマッシュアップや新サービスなど、組み合わせの発想指向が注目されています。そういう時代であることを認識した上で、しかし基礎技術となる OS やミドルウェア、各種ツール部分を人任せにし、組み合わせだけに特化することには一抹の寂しさも覚えます。ビジネス的な視点でも参入障壁が低いため、常に新しいサービスを追い求めることになります。じっくりと暖めるという余裕がありません。

技術者は今、じっくりと「ものづくり」をする人生という選択肢が許されず、短期間で結果を出さなければいけなくなりました。学生がそんな先輩の背中をみて「つまらなさそう」と感じているのであれば、私達がよい見本にならない限り、この傾向は進むと言わざるを得ません。