地理情報標準をどう考えるか

GIS の分野では、空間データ(主に形状)を「図郭」と「レイヤ」で管理する手法が一般的です。しかしオブジェクト指向の影響を受けて、「地物」単位で管理しようという流れができています。この仕様を国が標準化したものが「地理情報標準」です。しかし本仕様に対する現場レベルの抵抗は強く、その主な理由は「従来のGISでのデータ方式と比較して、何がよいのかわからない」「対応するソフトウェアがないので現実に使えない」というものです。これに対する反論を考えてみました。

地物単位でデータを扱うことは、具体的には UML で概念を捉え、XML で符号化する(データを表現する)ことです。あくまでも扱う単位を地物とするだけであり、情報量が変わるわけではありません。(XMLを使うことでバイトサイズは増えますが、これをもって情報量が増えるという表現は適切ではない)

では何がいいのか。従来型のデータ管理手法ではレイヤの作成ルールは利用者毎にばらばらでした。その結果、同じ地物を表現する場合でも A 組織と B 組織では管理体系が異なっていたわけです。これはデータの相互運用に支障をきたします。地理情報標準を使うと地物の定義を関係者で共有できるため、相互運用性が格段に向上します。その上で、標準定義に「従っていない」データのエラーチェックが(プログラムで)行えるようになるため、イレギュラーデータを水際で排除できます。「本当に使えるデータ」を残すための枠組みが整備できます。

このメリットが受け入れられない理由は、現場毎にやってきたデータ整備ルールが変わること、そして「適当につくってきた(一見、問題なさそうに見えるが、実は構造化されていない)データが排除される」ことにあるのではないかと考えています。データの作成についてもシビアになるでしょう。しかし「使えるデータ」を欲すれば、データ作成がシビアになることは当然です。要求水準=品質が上がることに対する抵抗を安易に認めるべきではありません。ここで妥協すると、納品されたデータは再利用しにくく、結局は背景図程度でしか使えない... ということになってしまいます。

沖縄地理情報システム協議会では現在、空間データをどのように整備するかという検討を進めています。是非とも将来を見据えて、使えるデータを残す枠組みを決めてほしいと思います。

なお、地物管理のもう一つのメリットは、地物単位更新の実現にあります。空間データを日常業務の一環で日々、更新することができればデータのリアルタイム性が格段に向上し、価値が高まります。そのためには現在の役所の業務フローにも手をつける必要があるでしょう。課題は山積みですが、それを整理していくことは大切です。