新人教育が無事に終了

ある県内企業様向けの新人教育が 9 月 26 日をもって無事に終了しました。最終日は「最新技術動向2008」というテーマで、以下の 4 つのテーマについて大枠の話をしました。

  1. RIA
  2. Web サービス
  3. SOA
  4. Java EE

講義には、私なりの解釈を加えるようにしています。おおまかには次のとおり。

  • RIA は Web ブラウザベースか、ブラウザをやめるかのどちらかの方向性になる。Web ベースの業務アプリケーションが一般化したのはまだ 10 年に満たないが、これだけ普及した現在、Web をやめて過去の C/S アーキテクチャに復帰するとは考えにくい。Web ベースなら Ajax がもっとも有力だろう。Flex を出している Adobe は(非ブラウザベースの)Air が、Silverlight を出している Microsoft は WPF が本命技術である。あくまでも Web にこだわっているのが Google なので、Google が提供する各種技術は注目に値する。ただ現時点で Ajax は IE 6/7 では遅い。Google Chrome のような高速な JavaScript エンジンがどこまで普及するかが一つの鍵になるだろう。
  • Web サービスは登場時と現在で言葉の意味が変わった。2000年当時の Web サービスは SOAP ベースであったが、2005 年の Ajax 登場後は Web ベースの API そのものが Web サービスという解釈となり、SOAP の色は薄まった。これは時期的には Google Maps の登場、Amazon が提供する API の普及、SOAP に代わる REST への注目と符号する。その後 SOAP を支持していたベンダーは SOA へと傾注していく。なお、SOAP を知るにあたっては、その前にあった CORBA や DCOM という技術の存在も知っておくこと。CORBA/DCOM, SOAP, BPEL を主導する IT ベンダーの目指すところはほぼ同じである。
  • SOA 自体は考え方であり技術ではない。具体的な SOA の形は SOAP ベースの Web サービスを呼び出す BPEL エンジンを使うことと解釈できる。BPEL は業務系ワークフローを実現するが、広義のワークフローと BPEL はイコールではない。WfMC が管理する XPDL, OMG が管理する BPMN そして OASIS が管理する BPEL はそれぞれ特徴と背景(歴史)があり、過去を追っていかないとわかりにくい。現在、XPDL は BPMN のメタモデルとして機能するが、BPMN と BPEL の相互変換は成立していない。SOA でもう一つ重要な技術は ESB である。ESB も SOAP を呼び出す技術基盤として一般的に知られているが ESB Mule のように拡張された考え方もある。ユーザ企業からみた場合 ESB Mule は魅力的な選択肢ではないだろうか。
  • Java EE は年明けにも EE 6 が出る見込みであるが、技術的な目新しさは少ない。JSFEJB 3 を組み合わせる場合のコーディングを楽にする Web Beans が注目されるが、これはすでに JBoss Seam で試すことができる。エンタープライズ系の仕様を引っ張っているのは Sun や IBM を中心としたチームではなく、Spring チームと JBoss チームになっていると考えている。ではどちらが今後、主流になるか?という判断は現時点では難しい。Spring は EJB 3 とは一線を画しているが、すでに多くの連携ミドルウェアをもっている。JBoss は自社技術を JSR にのせることで Java EE の標準という「錦の御旗」を重視している。

その他、携帯関連やバッチ処理、MDA の話をざっと語って終了。この世界は技術のスピードも速いが、その根っこにある思想や歴史を理解することで、その立ち位置をよく知ることができます。研修が終わったので、次は業務でお会いしましょう、と締めくくりました。