システム開発のリスクは誰もとりたくないが...

2008/10/1 の日経コンピュータ (No.714) 特集「ユーザーの言い分 ベンダーの言い分 - もう「あうん」は通用しない」を読みました。ITベンダー側によるここ数年の赤字プロジェクト削減という動きによって、要求が不明瞭な案件を実施するベンダーがいなくなりつつある。ユーザー企業の混乱がはじまっている、という内容でした。

企業のリストラが進んだため、ユーザー企業側の要求整理能力が落ちたのかも知れません。しかし私の目線では、これまで多少の赤字で受注してもシステムの保守、更新という名目で黒字化できていた構図が、ユーザー企業側の予算削減によって崩れてしまったのだろうと解釈しています。これに四半期決算の正確性を求める市場(株主)の要求や、工事進行基準という外的要因が加わり、プロジェクト単体での黒字化が必須となってきたわけです。

システム開発にリスクはつきものというのは常識ですが、そのリスクを誰が負担するか、というババぬきゲームになったとき、関係者が少しずつ不幸になります。リスクをそもそも軽減させる知恵が必要なのですが、そこにエネルギーをかけるのではなく、契約によってリスクの負担者をがんじがらめに決めていこうというのが問題です。

仕様が変わるのは開発側(ベンダー)にとってもちろんリスクです。しかし仕様変更を柔軟に受け入れられる体制づくりということにエネルギーをかけてきたでしょうか? その解はソフトウェアの部品化と自動生成にあるはずなのですが、そういう視点の代わりに契約で縛ろうとする。このままいくとユーザー企業は自衛策を講じることになるでしょう。

実はユーザー企業のシステム開発は、ユーザー自身が行う方がもっとも確実だというのが私の持論です。しかしそのための方法論やツールが乏しいので、自分たちにはできないと思っていらっしゃいます。Wagby の存在意義はここにあります。リスクを押し付け合うのではなく、そもそもリスクと思っていたもの(要件定義の変更)をリスクと認識しないでよい環境を整える。そういう発想の転換が必要です。