景気回復の功罪

都心では、景気回復の影響からか、派遣・個人事業のプログラマーの引き合いが増加傾向にあると聞きました。
一時は「仕事がない」という状態が続き、不安視されていただけに、これは喜ぶべきことです。

しかし一方で、不景気で仕事がない時は、業務内容を見つめ直し、新しいサービスの準備を行うきっかけにもなります。生き残りをかけた合併はリストラという形で企業の業績に貢献するでしょうが、新サービスへの展開へとつなげた企業はどれほどあるでしょうか。

それどころではない、とお叱りを受けそうですが、ここには IT 業界の根の深い問題の解決がまた先送りされそうだ、という忸怩たる思いがあります。それは下流工程を支える技術者の扱いに関する問題です。

2000年以降から顕著になったオフショア開発により、これまでも矛盾を孕みながら運用されてきた人月制度は崩壊の危機にあります。急速な単価の低価格化は技術者のプライドを挫き、この業界への魅力を失わせつつあります。下流工程は単なる作業となり、創造性を発揮しても評価につながらないという状況になりました。しかし業界全体として、これに代わる料金体系を示すことは未だにできていません。景気回復によってわずかに人月単価が上昇することがあれば、その一時的回復によって問題が先送りされるのではないかと思われます。

かつて私がこの業界に入った 20 年ほど前、システムエンジニアは花形と呼ばれていました。技術の差はプログラミングの生産性が 100 倍につながるということも不思議ではなく(他の業界ではあり得ない話です)それゆえに技術を磨くことが評価に直結すると信じられていました。しかし結果からいえば、技術力の有無によって給与に大きな差がつくという状況にはなりませんでした。むしろ標準的なスキルを有した、大量の技術者を管理する能力が重視されていきます。

問題の多い人月制度が維持されてきた背景はいろいろ考えられますが、あえて一つの要因を挙げるなら「予算制度」にあります。開発する前に予算を決めざるを得ない事情がありますが、予算策定の根拠となる工数調査が困難なため、勢い、過去の類似プロジェクトの工数に、人月を掛けあわせた算出になります。しかしこの段階では、開発内容は固まっていないのが実情です。

開発内容が曖昧な状態でも、受注業者は契約せざるを得ません。開発が進むに従って仕様が膨らむことはもはや常識ですが、予算追加措置は困難であるため、受注側はデスマーチとなります。これを何度も繰り返す中で、受注業者は「規模拡大によってリスクを平準化するか」「外注比率を高めて自社のリスクを減らすか(リスクは外注先に負わせる)」「SIではなく人材派遣を選択し、リスクを減らすか」といった選択を行うようになります。ここには技術者が本来求めていた、お客様との関係性を良くしたい、という視点で語られることはありません。

腕に覚えのある技術者であるほど、この状況をどう捉えるかにかかっています。

  • 技術力一本で勝負するという世界を探し続ける。これは AppStore に個人プログラマが集中したことからも、どこかにまだフロンティアが残っているのではないか、という思いを持ち続けたい気持ちがわかります。
  • 上流工程へシフトする、またはグローバリズムを先取りし、ブリッジSEとなる。コミュニケーション能力を鍛えることで、成功する可能性が高まります。
  • 現状を割り切って受け入れる。技術力を別の形で(OSSコミュニティなどに)貢献するというアプローチもあります。しかし、本来は自分が所属している組織で正当に評価されることが望ましいことです。

これらの視点で共通しているのは、どれも「技術者個人の視点で解決策を探そうとしている」ことです。
しかし私は、この問題を共有するスタッフと一緒になって「組織として解決」したいと願っています。

古くさい表現かも知れませんが、光明は「提案型営業」に見出しています。平たくいうと、「技術力があるから仕事をください」というアプローチは終わった、と解釈したということです。下請けではなく、プロデューサーになること。そのためには「企画・営業・技術」機能をもった組織が必要です。組織としてビジネスチャンスを見出し、積極的に提案型営業を行うこと。特に我々のような小企業は、企画力(アイデア)で勝負することが大切です。

提案型営業を標榜する会社にあって、技術者は個々のスキルよりも、その会社全体がもっている提案力がお客様にどう響いたで給与が決まるという事実を受け入れられるかどうか、になります。技術があっても給与をもらえるわけではない - それを自分の中で飲み込み、視野を世間に拡げて企画することを楽しむ。発想の原点はベンチャー的で不安定ですが、そこには「やらされ感」に変わる「充実感」があります。Wagby は、この提案型営業に欠かせない大切なツールです。

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