IT 業界の構造改革と、当社の立ち位置

多くの同業他社から「当社も構造改革しなければならない」という意見をよく耳にします。改革という目的には理由(問題点)があるわけですが、これはほぼ共通で、「ヒト派遣ビジネスでは利益が出ない」「技術者単価が上がらない」「プロジェクト管理がうまくいかない」「縮小する市場を多くの企業で取り合っている」などが挙げられます。実際、この数年の技術者単価の低下には驚くばかりで、若い技術者から見た業界への魅力が乏しくなっていることは否めません。

これに対する構造改革の方向性は各社さまざまですが、「現在の危機を乗り切るためのリストラ策」に終始するのではなく、「その先にある未来(の会社の形)」を示せているかどうかがポイントになると考えています。

リストラ策そのものは、ほぼ共通でしょう。「年齢層の高い技術者層の解雇」「在職者への給与賃金凍結」「先端的技術教育の凍結」などがあり、倒産という最悪の事態を回避するための挙国一致体制として社員に説明されることになります。社員としても倒産 = 悪という構図では経営者と同じ立場ですから、この先送り策を受け入れる以外の選択肢は、ありません。しかしモチベーションは大きく下がります。

そこで社員が見ているのはリストラの先にある、5 年後、10 年後の未来を語る経営者の姿だと思っています。会社が今の危機を乗り切ったとき、こういう立場になることを目指す、という目標が社員のモチベーション向上につながります。経営者にとって重責なのは言うまでもありませんが、「この会社をこうしたい」という最も熱い情熱をもった人が経営者であるわけですから、特段難しいことではありません。その情熱がない、もしくは会社の方向性が考えられない経営者は第一線から去ることが妥当です。

そういう意味では、部下はもっと経営者に議論をふっかけてもいい。隙があれば引導を渡すくらいの勢いをもった部下が多くいる会社の方が強いでしょう。経営者も命令すれば部下は黙ってついてくる、ではなく、真剣な議論をとおして部下を育てるという仕事をすることが大切だと自覚をもつことです。(部下の方からすれば、そんなことをして管理職になっては大変だ、と思ってしまうのかも知れませんが...)

ところで何かのアンケート結果で読んだのですが、人間は歳をとると、自分への反対意見を受け入れる能力が下がるそうです。逆にいえば若い社長というのは、自分への反対意見を述べる部下を側に置くことができるという解釈もできます。私は「多様性」というのは会社にとって重要な要素だと考えているので、反対意見を述べる部下は大切だし、さまざまな意見をいえるだけの環境(雰囲気)をつくりたいと思っています。それは私がまだ若いという証拠なのかも知れません。

もし私が自分への反対意見を述べた部下を疎んじて、会社の外に出そうという態度をとるようなことがあれば(そしてイエスマンばかりで固めようとするならば)私の経営者としての役割は終わったと判断できると思います。そのときは部下の誰かが私に引導を渡してくれることでしょう。そういう緊張感をもって仕事をすることは必要だと理解しています。

もうすぐ当社も恒例の個人面接が始まります。当社の構造改革は平成16年に自社製品をデビューさせ、東京に拠点を設置したときから始まりました。よって現在は改革の途上にあります。人事評価制度をはじめ社内で議論すべきことは多くありますが、安心して仕事ができ、将来の飛躍への芽を日々、育てているという実感を伴える会社にしていきたいと願っています。