リーマン・ブラザーズ破綻から 1 年、景気底入れは幻想

日経ビジネス 2009.9.7 号特集記事より。このレポートによると、経済の混乱はまだまだ続く見通しであると認識せざるを得ません。
昨今の「景気回復の兆し」という各国政府の発表は財政刺激(モルヒネ)の一時的効果であり、本質的には変わっていないというものです。

  1. 米国ではショッピングモールの空きテナントが増えている。サブプライムローンを超える金額の、商業用不動産証券に影響がある。
  2. 米国の住宅ローンにも、日本の住宅金融公庫が実施した「ゆとり返済」に似た「オプションARM」がある。この返済のヤマが今年後半から始まる。住宅を手放す人がさらに増えるかも知れない。
  3. 日本のマスコミも一時期大きく取り上げていたアイスランドだが、状況は改善されていない。国家破綻の状態にある。
  4. ラトビアは通貨切り下げに追い込まれるかも知れない。そのショックが欧州に広がる懸念がある。東欧向け資産が劣化すれば、欧州銀のバランスシートに傷がつく。
  5. アジアは中国特需が新たなリスクになった。米国向け輸出が改善しない状況で、中国への依存度が増えている。しかし中国の景気回復は強引な政府主導でつくられたものであり、自律的な回復軌道にはのっていない。中国もまた、欧米市場の回復による輸出産業の再浮上まで時間稼ぎをしている状況。

米国は金融工学から一時的に離れ、製造業回帰を鮮明にするでしょう。となるとドル安へ誘導されるはず。そうなると日本、アジアの輸出産業は打撃を受け続けるため、簡単な輸出回復シナリオは望めません。やはり新産業創出という、困難ですが頭脳を総動員する方向に進むしかないといえます。