来年のクラウドコンピューティングを考える

年明け早々のビックニュースは、マイクロソフトによる Azure の商用サービス開始でしょう。
Azure が世界で、そして日本市場で成功するかは IT 業界が多いに注目しているところです。

Azure の登場は「企業向けに限っていえば、スケールしないクラウド環境があってもいい、むしろその方が市場はある」という提案だと理解しています。

本当にそのような市場があるのなら、来年以降、企業は自社サーバを撤廃して、マイクロソフト(もしくはアマゾンなどの類似サービス)への乗り換えが加速することでしょう。こちらの市場規模が大きくなれば、「クラウド = 自社サーバをもたないこと」という解釈が一般化することになります。

しかし私の理解では、クラウドとはスケールすることが前提というものでした。具体的には Goolge App Engine こそがクラウドの具体的な姿だということです。そしてスケールするクラウドの使い方は、不特定多数のユーザー向けサービス(いわゆる B2C 形態)の構築にあります。この場合の「C」は、PC だけではなく携帯電話、スマートフォンの利用を含みます。ただ、このようなサービスを提供する企業は一部だとすれば、ほとんどの企業にとってクラウドはサーバホスティングと同じものだとみなすことでしょう。

確かにスケールしないクラウドは、サーバホスティングと同じようにみえます。

この違いは技術的には「仮想化技術を使っているかどうか」でしょうが、お客様視点でみた場合は「これまでのホスティングよりも格段に安いサービス体系」にあるでしょう。1時間10円から、という価格体系こそが新しい切り口です。時間貸しのサーバホスティングがクラウドだ、となり、スケールするかしないかは二次的な差別化要因になります。

そのような時代にあっては、パッケージソフトウェアもクラウド環境で「時間貸し」されるのが一般化するでしょう。
企業へのクラウド(時間貸しサーバホスティング)の普及に歩調を合わせる形で、私達パッケージベンダーも形を変えることになります。2010年は私達を始めとする多くのパッケージベンダーはスケールする、しない、という両方の環境をにらみながらクラウドへの移行を実践していくことになるでしょう。