独自技術の有無が四月以降の勝負になる

新年の挨拶回りでお客様のところを訪問していますが、おおまかな景況感は「三月までは新規開発案件は凍結なので(仕事がないのは)我慢する。四月以降にIT投資が動き始めることを期待したい。」というものです。

しかし、かねてより主張しているように、私の予想は「景気が回復基調に向かったとしても、受託開発案件の価格下落は止まらない」です。その根拠は次のとおりです。

  • 開発者の供給過剰。この数年でオフショア開発が進んだため、日本語を理解できてスキルの高い海外の技術者が増えています。海外勢が分母に加わったため、需要に対する供給はまだ多いのです。
  • クラウド、SaaS の採用が増えるに従い、ハードウェア・インストール作業・保守といった周辺業務が消滅します。それによって案件の受注価格の減少は、むしろこれから本番を迎えます。

ただし悲観することはありません。こういう状況で強みを発揮する企業は必ずあります。それは他社が真似できない独自技術を持つ企業です。少なくとも、同業他社が同じ技術ノウハウを蓄積しようとしたときに、1年から2年は先を行っている... というレベルである必要があります。そういう企業は景気回復時に自分の強みをいかに横展開するかが成長の鍵になります。

そのような独自技術をあいにく育ててこなかった、という企業は、独自技術を有した企業と組むという選択を行うときです。建前だけ協業というのは、最もやってはいけないことで、果実をとることもできない上に時間だけ浪費してしまい、その後の選択肢がさらに狭まります。素早い決断と、最優秀の人材層を投入することで早々に果実をとる、という経営判断が求められています。

不況の時期は自分たちの立ち位置を振り返るチャンスです。そもそも自分たちは何を指向しているのか、そのためにどういう技術が必要なのかを自分の頭で考え、経営戦略を立案しましょう。そして三月までに方向性を出せば、四月以降の営業活動に弾みがつけられます。景気が回復すれば、また受託案件が増えるだろうという楽観的な予測で嵐が過ぎるのを待つ「先送り経営判断」は、もう持たないというのが私の実感です。