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地元が求める振興策の果実

基地問題が沸騰する沖縄では、水面下で振興策の話も進んでいるのだろうと予想します。骨組みが固まってから、業界団体を通して姿がみえるはずなので、今の私達には知る由もなし。ただ、1998 年の沖縄県マルチメディアアイランド構想からこれまでに至る経緯をみてきた一人として、考えるものはあります。

東京サイドで何億円もする振興策の案がつくられるとき、そのポンチ絵を描くのは沖縄とは特にゆかりのないコンサルの方々でしょう。よって、その絵自体は(沖縄でなくとも)どの地域でも再利用できるネタです。そういう大きな絵を地元企業だけで携わることは難しいので、基本部分は大手企業が構築し、その運用と保守を地元企業に任せる、ただし(ここが重要ですが)その保守費は地元で捻出するように、となっていることが多いです。なぜ保守費を国が出せないかといえば、一つは単年度予算の縛りがあるため、もう一つは政権交代やその時々の事情によって予算の作り方は変わるので、保証しにくいためだと考えています。よって、一時的に大きな予算がつくも地元企業はてんやわんやとなり、そのあとは、せっかくノウハウをつけた技術者の雇用継続ができずに、再び振興策をとりにいく(とれなければ人材を解雇せざるを得ない...)という悪循環に陥ります。誰かが、これを補助金付け体質と呼んでいましたが、そのとおりだと思います。

地元目線からいうと、必要なのは「少額でも、10年ほどの継続性があり、かつ地元企業で主導できる」振興策です。私が関わっているプロジェクトの一つでは、地理情報システム (GIS) がそういう性質をもっています。空間データは常に陳腐化する(街づくりによってリアル空間の形は日々、変わる)ため、データ保守の継続性が重要です。常に最新のデータが入手できるという状態があれば、これを使った応用事例が登場すると期待されています。しかし現実には、データを維持する予算を捻出できず、活用されにくいという問題があります。

このようなケースでは「初年度に大きな予算をつける」ようなアプローチは、かえって期待をあおる分、失敗の可能性が高くなると感じています。その初年度さえも、わけのわからない高価なハードウェアを導入されてしまうと、さらに状況は悪化します。その保守費が重くのしかかるためです。大手企業の提案には大抵、常に地元ではとても購入できないような高価な機器がのってきますが、それは時代遅れのアプローチであると早く気付いてほしいものです。

しかし現実問題として、継続性を保証することができないのなら、お金による振興策はかえって地元を混乱させるだけなので、こちらからお断りしてもいいのではないかとさえ感じています。では地元企業に求められていることは何かといえば、自分たちのアタマで考え、自分たちの身の丈で運用できる規模の新ビジネスを生み出すことです。そのときに法制度の面で問題がでたときにはじめて、振興策の一環として、一国二制度的な運用を陳情するのが良いと考えます。

喉がかわいている人がコップ一杯の水を所望したときに、樽一杯の水をもってきて、飲み干せ、と言われても飲めません。しかしその樽の後ろには、「飲めないとわかっているから、代わりに飲んであげるよ」という人たちが(なぜか)大勢いるわけです。それでいて、表向きは「この人に樽一杯の水を馳走した」と言われても素直に感謝できません。何か、やられた、という気持ちです。

そうではなく、最初にコップ一杯の水と、あとは井戸の掘り方を教えてほしい。堀る方法の原理がわかれば、あとは地元の事情を考慮して、応用は可能です。特殊な機器もいりません。地元には、応用力を備えた人材は豊富にいますので、心配もいりません。井戸を掘り始めたら、あとは見守ってさえくれればいい。あーだこーだという指図も不要です。もちろん失敗することもあるでしょうが、それも経験です。失敗の中から出てくるビジネスモデルもあるはずです。この視点で 10 年やっていただければ、しっかりと根をはり、かつ外へ出ていける企業(と人材)が地元に定着できると考えます。それが振興策の果実になります。

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