平成19年7月3日に開始した沖縄新世代経営者塾が、昨日(平成22年7月18日)に終了しました。県内20名の若手経営者(開始当時で40代中心)と、県外からのアドバイザ11名が集い、のべ10回の塾が開催されました。自分用のメモとして、振り返りたいと思います。
第一回 | 平成19年7月3日 | 西濃運輸 田口社長 ご講話 | 参加 |
第二回 | 平成19年11月18日 | ドトールコーヒー 鳥羽名誉会長 ご講話 | 参加 |
第三回 | 平成20年1月20日 | 堺屋太一様 ご講話 | 参加 |
第四回 | 平成20年5月11日 | 沖縄セルラー電話 知念会長 ご講話 | 欠席 |
第五回 | 平成20年9月7日 | 琉球放送 小禄会長 ご講話 | 参加 |
第六回 | 平成21年1月18日 | ウシオ電機 牛尾会長 ご講話 | 欠席 |
第七回 | 平成21年6月24日 | 日本アイ・ビー・エム 椎名相談役 ご講話 | 参加 |
第八回 | 平成21年10月24日 | 県内塾生からの発表 | 参加 |
第九回 | 平成22年3月21日 | 私の発表:人事考課制度について | 参加 |
第十回 | 平成22年7月18日 | 県内塾生からの発表;塾長代行:高橋様 | 参加 |
開始当時は「この会の目的がはっきりしない」というコメントもありました。しかし終了した今、インフォテリアの平野社長が「この会は、新しいネットワークをつくった」という言葉が、この会の意味付けを示したといえます。毎回実施された懇親会を通して、通常の異業種交流会では得られない、各社の成長過程における悩みを共有できた、密度の濃い "つながり" ができたと思います。毎回必ず懇親会を企画された内閣府の方々には心から感謝します。
この会の最初に、江口塾長が「この3年間で、売上2倍、利益2倍、無借金経営を目指すこと」を打ち出しました。残念ながら当社が実現できたのは無借金経営だけで、売上・利益は微増、微減を繰り返す状況でしたが、目標とするパッケージソフト開発・販売事業の継続ができたことは幸いでした。
私にとって「経営者塾」というもの自体へ参加することが初体験でしたので、さまざまな学び、気付きがありました。まず講話の中でぐっときた言葉を列挙してみます。
- 松下翁に「成功のコツ」を尋ねた方がいる。そのときに「 恵まれた3つの事柄がある。」と発言された。それは「学がない」「お金がない」「健康がない」ということ。
- 普遍性とは、自分の会社の理念、哲学に関わる部分。これを変えてはいけない。ここが変わると経営が揺れる。一方で技術、組織、体制などは時代によって変えていかないといけない。
- 儲かるからといって、自分の本業と違うところで手を広げるのは危険。多角経営は知らないところに手を出すので危険、やらない方がいい。柱を多くする経営は大切。
- 熱意が経営の出発点であること。「成功するまで続ければ 事は必ず成功する」(松下幸之助の言葉)、熱意が知恵を生み出す。知恵が入り口ではない。熱意は経営の出発点、ナンクルナイサでは経営はできない。
- 世界的視野を持つこと。世界の動向を見る。自分の事業は、他国でも通用するか?という視点をいつも持つ、まずは東京という時代でもない。
- 正しい判断と行動をとること 浮利を追わず理念に徹する。どうやったらお金もうけできるか、ではなく、どうやったらお客さんが喜ぶか?
- 経営者は、勝つだけではなく、勝ち方に気をつけなければならない。品格、プライド、つまり経営の美学を追求することが必要。コンプライアンス経営とは最低限であって、その程度で経営をやってはいけない。人間的に許されるのか、許されないのかを考えないといけない。
- 不動の信念と、変えるべきところを変える柔軟性をあわせもつ。
- 事業をやるには「好きなこと」がよい。好きとは有利なこと、馴れたこととは違う。この話となら、何時間でも、誰とでも続けられるのが「好き」なこと。好きな事をはじめ、同士を集める。沖縄に可能性がある。
- 「稚夢」をみること。これを理念に変える。「鬼迫」をもつこと。自分の理念で、人を動かさないといけない。「人才」をもつこと。好きなことは才能につながる。人脈ができる。「佛心」をもつこと。人の失敗を許す。けなす人は多い。これがなかなかできない。
- トップの姿勢が会社のすべてになる。これからの企業はこれがないともたない。
- 商売は金儲けより、多くの人を喜ばせることに主眼を置く。
- お客様に愛されること。愛されなければ、固定客がつかない。
- 社員に誇りを持たせる。社員に励ましを与える。社員に感動を与える。
- 製品をつくる前に、人をつくる会社になる。
- 企業倒産の前に「心の倒産」がおこる。社長が気力を失い、社員がやる気を失うと、結果的に企業が倒産する。社長の気力を維持し、いかにして社員のやる気を引き出すか。不況のときこそ、社長というポジションの意味がある。狩猟隊長型リーダーが求められる。
- 商品のレベルで商売するのではなく、人間のレベルで商売しなければならない。商品を売ろうと先行すると、小手先の販売戦略、商品開発戦略になってしまう。売ろうとせずに人間力を磨けば、結果はあとからついてくる。
これらの言葉をとおして先輩方となる経営者から学んだことは、"経営者には凛とした哲学が必要である" ということです。起業した当時、私はそこまで考察していませんでしたが、数々の失敗、経験をとおして、今ではこれらの助言が素直に心に染み入ります。その心境となるまで 10 年を費やさざるをえなかったのは自分の甘さですが、今はこれらの助言を胸に、日々の活動を行いたいと思っています。
一方で、沖縄側の経営者(私も含めた)に共通の課題にも気付くことができました。それは事業のスケール感の差です。塾長が「ここをこうやったら、このビジネスはすぐに10億までは伸びそうだね」とアドバイスされても、その数字が途方もない大きさに感じるのです。その差が経験不足であることは明白です。沖縄だけを市場とするのではなく、かといって東京でもない、世界的な視野をもたないといけないと痛感しました。
また「人材不足」は中小企業にとって共通の悩みですが、それを解決するためにヘッドハンティングをする、といったアグレッシブな方法をとったかと問われると、そこまでやっていないと言わざるをえません。「モノが売れない」というのも共通の悩みですが、それを解決するためにマーケティングに大きな投資をするということも決断してきませんでした。その根底にあるのは、社長として、勝負をかけるという決断を行うかどうかです。(結果的に)成功したと賞賛される企業は、その社歴の中で節目節目に重大な投資決断をされています。失敗すれば倒産、成功すれば賞賛という状況の中での覚悟 - その経験を避けていては、会社は成長しないということを改めて気付かされました。リスクはできるだけ回避しますが、ここぞというときに勝負をかける覚悟があるか、その壁を乗り越えられるよう、日々精進するという気持ちで進もうと思います。