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新人研修の講義でクラウド、スマートフォンを語る

先日、外部の新人研修講師として招聘され、最新技術動向を語る機会がありました。
その概要を紹介します。

クラウドとは何か

さて、ここに日経新聞 2010 年 9 月 27 日版の朝刊をもってきました。IT 企業の全面広告が 3 つもありますね。NEC さんは「クラウド」と書いています。NTT さんも「クラウド」ですね。IBM さんはクラウドとは大きく書いていませんが、このサーバをみてください。メモリが 192GB もあります。実はこれ、クラウド向けサーバとして売り込んでいるのです。今、大手メーカーをはじめ、IT 業界全体が "クラウド" の大合唱です。しかしこれを単なる営業トークではなく、大きな流れとして捉えないと、見誤ります。

今、起きているクラウド現象とは、「データの保存を行う巨大なセンター群と、端末が分離され、それぞれ独自の発展を遂げている」ものといわれています。両者は一見、ばらばらですが、インターネットでつながるという共通点があります。これまではパソコンの中にデータもアプリケーションも入っていました。今、それが分かれようとしています。その結果、パソコンとは異なる端末 - スマートフォンと呼ばれる分野が急速に発展しています。

クラウドには、実は4 つの分類があります。"自社で管理(プライベートクラウド)" というカテゴリから、ハードを提供する HaaS/IaaS, アプリケーションの開発・実行環境を提供する PaaS、そしてアプリケーションそのものを提供する SaaS です。これらを総称してクラウドと括ってしまうとぼやけてしまいますが、実際にはクラウドのどの部分でビジネスをするのか、は各社それぞれです。
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1006/01/news086.html

なぜスマートフォンが重要なのか

ここで話を変えて、一つの円グラフを紹介します。これは 2010 年 8 月の携帯電話シェアの推移ですが、ソフトバンクが 20 パーセントを超えたと話題になりました。
http://www.losttechnology.jp/k-tai/

国内の携帯電話の総数が何台ほどか、知っていますか? ちなみに総人口は 1 億 2 千万人です。

これをみると、1 億台以上あることがわかりますね。うち、ソフトバンクは 2300 万台となっています。
そのうち、iPhone 率はどのくらいなのでしょう? 仮に 10 パーセントとして 230 万台です。

年間の携帯電話の買い替え台数はどのくらいだと思いますか?

およそ 3500 万台ほどです。つまり 3 年で買い替えが進んでいる構図です。
今、iPhone をはじめとするスマートフォンの人気が高いですね。もしかすると 3 年後の 2014 年には、50 パーセントがスマートフォンということもありえるかも知れません。台数ベースでいえば、4 千から 5 千万台ということです。

これがどのくらいインパクトのある数字なのかを、次のページで確認しましょう。
「2009年国内PC出荷台数ランキング」
http://www.rbbtoday.com/article/img/2010/02/04/65451/94812.html

これをみると、年間 1300 万台となっていますね。PC の耐用年数を 5 年とすれば、おおよそ 6500 万台の PC があることになりますが、スマートフォンはそれに匹敵する可能性があるということです。個人的には、スマートフォンの伸びとともに、PC の出荷ベースは落ちると予想しています。ここでいう PC とは、いわゆる Windows や Mac OS を搭載した PC のことです。これらは私たちからみれば、業務端末です。クラウドのインパクトの一つには、スマートフォンの業務端末化が進むことにあります。

スマートフォンが業務端末になる

次のページを紹介しましょう。

「モバイル端末から社内システムを利用する企業が3割に」
http://www.computerworld.jp/topics/iphone/189215.html

企業のデータは、内勤の会社員だけがアクセスできるという形から、出先からも操作したいというように変わっています。これはオフィスにいなくても仕事をしたい、というライフスタイルの動きと連動しています。

そして、iPhoneiPad はすでに業務端末として高い注目を集めています。

ソフトバンクテレコムiPhoneの業務事例公開、遠隔医療やeラーニングで利用始まる」は 1 年前の記事です。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20091015/338885/

「業務利用で拡がる“どこでもiPad”銀行やピザ店など各種サービスで採用、オフィスや学校でも導入の動き」
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/trend/20100916/1027514/?f=ranking

iPadのビジネス利用進む」
http://ht.ly/2AS3J

「日本パレットレンタル iPhoneアプリを内製で開発、すべての外勤社員が利用して業務を効率化」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20100818/351244/

いかがでしょう。すでに業務アプリケーションのスマートフォン対応化は大きなビジネスになっていることがわかりましたか。

開発が変わる

クラウドとスマートフォンという新しい環境での開発言語でも Java は有用です。しかし、アプリケーションの設計や実装方法はこれまでの Java EE とは変わってきます。

まずサーバサイドでいえば、Google App Engine の登場が大きなインパクトでした。RDB が使えない、という環境を意識するというのは発想の転換が必要で、"NoSQL" というキーワードが一気に注目されました。
http://code.google.com/intl/ja/appengine/

もちろん、クラウドはすべて NoSQL ということでもありません。Google も今度、SQL が使える環境を出す、とアナウンスしています。
http://code.google.com/intl/ja/appengine/business/

他にも Microsoft Azure や Amazon EC2Salesforce.com など、主に海外勢のクラウドプラットフォームが席巻しています。
http://aws.amazon.com/jp/ec2/
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/windowsazure/default.aspx
http://www.salesforce.com/platform/

その上で、スマートフォン上での開発がまた大きく変わります。一言で表現するなら、Windows 時代の開発ノウハウが使えません。iPhoneObjective-C という言語ですし、Android OS は Java (ただし Java EE ではない)を使います。両社の将来性は共に互角ですので、開発者は両方の開発言語に習熟することが求められます。

ただし、業務アプリケーションという分野に限定すれば、第三の選択肢があります。それは HTML5 + JavaScript + CSS3 です。これまでの Web 技術の進化系であり、かつ iPhoneAndroid の両方で動作するため、注目されています。すでにこの技術を補完する、さまざまなフレームワークが登場しています。

http://www.sencha.com/products/touch/index.php
http://www.phonegap.com/
http://webapp-net.com/

クラウド市場が伸びる、その陰で起こっていること

クラウド市場は大きく伸びるという調査報告が目白押しです。

「国内プライベート・クラウド市場、2014年まで年率30.7%で成長」
http://www.computerworld.jp/topics/cloud/189201.html

「国内パブリック・クラウド市場、2014年には1,400億円市場に」
http://www.computerworld.jp/topics/cloud/179269.html

「2009年クラウド市場、プライベートクラウドパブリッククラウドの比は7:3」
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/03/09/033/index.html

これらをみるとクラウドと名前がつくものは売れそうですね。しかし現在の厳しい経営環境で、各社とも IT 投資を絞っているという報道ばかりです。なぜ、クラウド市場は伸びるのでしょう。

実は、クラウド製品に投資している企業はいずれも「これでコストを削減できた」と喜んでいるのです。ここに重要なヒントがあります。つまり、クラウド関連市場の伸びに伴い、これまでのビジネスのある部分が減少しているのです。それは「中・小規模サーバの販売と、導入支援」「サーバの運用保守」ビジネスです。そして、このビジネスに依存してきたのが地方の IT 企業です。クラウドの伸びとともに、地方の IT 企業が厳しくなると考えられています。

SIer への影響

システムインテグレータ (SIer) と呼ばれる開発系企業は、今後、どのような影響を受けるのでしょうか。
ここで、次の記事を紹介します。

「大手元請企業は、中小の下請企業を使わなくなる」
http://japan.zdnet.com/blog/netcommerce/2010/01/21/entry_27036693/

大手元請企業は、自分達で上流を押さえ、開発や運用は、クラウドやオフショアに任せることになるから、下請による開発や運用の受託業務の仕事量は、構造的に減少することになるだろう。

ただし、私はこれを悲観的に捉えることはないと考えています。今は "お客様から言われたものをつくれば、お金をいただける" 時代から、"何をつくればいいかを、お客様に提案する" 時代に変わろうとしているのです。そのためには、プログラミングスキルに加えて、IT を使ってお客様が儲かる仕組み(ビジネスモデル)を提案するセンスが求められます。

ビジネスモデルのセンスを養うためには、世の中の変化を敏感に捉えることです。さまざまなニュースを読み、自分の体験も増やしながら、「この部分に IT を使うことでメリットがある」という視点をお客様に提案していきましょう。クラウドもスマートフォンも、活用すべき新しい手段であり、目的はビジネスモデルを具現化することにあります。

新人の皆さんは、まず高いプログラミングスキルを身につけること、その上で社会の動きに敏感になることをお薦めします。IT 業界に閉じず、さまざまなものに興味を持ってください。それが皆さんの力になります。がんばってください。

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