ブランドダイアログ社の企業戦略から学ぶこと

本日の MIJS PB 委員会もまた刺激的な内容でした。無料グループウェアで評判の GRIDY を牽引するブランドダイアログ社の稲葉社長の講演です。
http://gridy.jp/portal/index.html
http://www.branddialog.co.jp/

完全無料のグループウェアで、導入実績 8000 社を超えられたとのことですが、果たしてどのようなビジネスモデルなのか?私も含め、参加した MIJS 会員企業はその秘密を知りたいという思いで参加されたはずです。かなりオフレコな内容もあったためブログには書きませんが、「なるほど、すごい!」と感じた人もいれば「本当に大丈夫なのか?」と懸念した人もいらっしゃったことでしょう。複雑なモデルであることから、例えば私に同じようなことができるか、と問われれば、難しいと答えざるをえないものでした。技術力も発想力もマーケティングも、これまでの業務系システム開発者からはでてこない斬新な発想に支えられています。このようなアイデアを具現化し、実際にビジネスとして展開されていることは、日本の IT ベンチャーの多様性を示す良い事例だと思います。

つまるところベンチャー企業とは「成功するのかどうか、即断できないビジネスに邁進する」ものです。誰が聞いても成功すると思うビジネスモデルなら大企業がしっかりと進めることでしょう。他ではやらないチャンスに賭ける、という熱さこそがベンチャー企業の本質であると考えれば、ブランドダイアログ社の戦略はまさに王道といえます。そこに技術力と、応援する資本家(VC)がいて、社長のマーケティング力があるから社員が集まるのです。

ブランドダイアログ社の戦略で参考になったのは、同社のコア技術である分散コンピューティングを前面に出さず、グループウェアという「わかりやすい」商品を提供したことです。これは Salesforce.com と共通します。Salesforce.com も内部的には force.com というプラットフォームが核ですが、創業初期はこれを前面に出さず、CRM という「わかりやすい」商品から市場開拓を図りました。

このようなマーケティング上の工夫は私たちも学ぶべきでしょう。良いものはどんどん取り入れます。Wagby という自動生成ツールが当社の核ですが、開発ツールの説明はどうしても玄人向けになりがちです。Wagby でつくった具体的アプリケーションが他社パッケージ製品と遜色ないレベルに達してはじめて、「実はこれ、自動生成なんです。」とつぶやくのが効果があることでしょう。是非ともそのようにしたいと思います。

ところで講演の中で稲葉社長は欧米型狩猟社会と、日本型農耕社会の特性から、欧米は加点主義で、できないことよりできることを重視するが、日本は減点主義で、できることよりできないことに目がいくと喝破されていました。私も同感です。これが日本でパッケージソフトウェアビジネスがなかなか受け入れにくい背景になっているのではないかと感じています。その壁を乗り越えるには、もちろん製品の品質強化がいわずもがなですが、それだけではなく、わかりやすく特徴を伝えるための技術など、さまざまな手法が必要です。信頼される企業になるために、どこにどうお金をかけたらよいかという悩みもありますが、MIJS 加盟企業の取り組みは私にとっても大いに参考になります。

この会ではいつも刺激をいただいています。本日、稲葉社長から感じられたのは、「100人中、100人がダメだという中に成功のタネがある」という、ある種の天の邪鬼さとでもいうものでした。そして私はこのような発想が好きです。なぜ私がこの会に定期的に参加するかといえば、こういうキャラクターの方が集まるから、ということになります。そういう場に参加して、感性を磨くことができるのは楽しく、また幸せな時間でもあります。そこで得たものを社内にフィードバックし、社員と共有し、組織を活性化していくのが私の仕事(の一つ)です。