「優秀な学生」の定義とは

昨日の母校の講義で、何名かの学生と話をする機会がありました。そこで気付いたのは、彼らも必死に「企業が求める優秀な学生像」に自分を近づけようと努力しているのですが、そもそも「優秀な学生」の定義が曖昧ではないか、ということです。

大人達は皆、自分の目線で「いいか、優秀な学生というのはな、...」と語り始めることでしょう。さらにややこしいのは同じ人であっても、時代によって、職種によって、会社規模によって、語る内容が変わる可能性もあります。学生にとっては何を目標にすればいいか、ますます混乱します。

さて私が昨日話したのは、おおむね、次のような内容でした。

現在は学力や資格の有無が優秀、といえなくなってしまった。企業に仕事があれば、その仕事をできる能力(学歴)をもった人を採用するだろう。しかし現在は仕事がない。企業側が欲しいのは仕事を創造できる人である。それができる人を優秀と扱うだろう。

しかし、新入社員にいきなり仕事を創造しろ、というのも無茶な話です。
とはいえ「こういう能力があるので採用してください。」という現在のアプローチでは、採用枠に限界がある以上、事態は好転しません。

ではどうすればいいのか。

例えば次のような発想もあります。

  • 香港や台湾の企業に飛び込み、そこで人脈をつくって日本企業に戻る。国内市場が縮小する中で、多くの日本企業は自社製品・サービスを海外(アジア)に販売することを狙っている。人脈は企業が喉から手が出るほど欲しい。
  • IT 系であれば、数名のチームで何かつくってみる。就職活動にかけようとしていたエネルギーをすべて注ぎ込み、ひたすらアイデアを具現化する。その上で、企業に対してつくったサービスをデモし、チーム全体を売り込む。例えば大手メーカーが実施するプログラミングコンテストに応募する、なども良いだろう。

両者に共通しているのは、就職して安定した給料をいただくという前提に立っていないことです。かなりチャレンジングに思えることでしょう。それでも、「今の時代はこういう視点に立って実際に動ける人が求められています」となったとき、覚悟して飛び込めるかどうか。

ここまで書いて気付きました。3年生、4年生で就職活動という名の下に企業を訪問するのではなく、1年生の段階からさまざまな機会を与えて、企業側が欲しくなる経歴を(4年かけて)獲得する方がよいのかも知れません。今後、大学における就職支援は、企業との面接機会を多く与える(マッチング)から、経歴の創造へとシフトすることが求められるのではないでしょうか。

日本もいずれ好況になるかも知れないという期待を持ち続けるという発想もありますが、就職活動中の学生には間に合いません。企業が求める優秀さの定義が従来と異なることを自覚し、その変化に自らを対応させることが「今を生きる」ことになると考えています。そして、その活動は結果的に自らを高め、企業と対等な関係を築けることにつながります。早めにそれに気付くことができるのは、大きな財産になります。