池上 永一氏 著「テンペスト」からみる、組織と人の関係

IT 業界は「1年先のことがわからない」ほど変化のスピードが早いと揶揄されることがありますが、今年は社会情勢そのものが、大きな変化に翻弄された 1 年だったと感じています。

国内政治だけでなく隣国との関係、そして日本の将来と、考えるべきことがたくさんあります。個人の尊厳を尊重しつつ、世界の中での個々の役割を自覚していくという、高いレベルの意識をもって日々を生きることが求められています。グローバル競争は地域に閉じず、個を解放します。精神的に鍛えられる時代になってきました。

今、池上 永一氏 著作の「テンペスト」を読んでいます。沖縄県出身の作家だけあって、題材は琉球王朝末期の時代に生きる人々をとりあげているのですが、これが実に今の時代との既視感があって面白いのです。

  • 大国に対して、相手を立てつつ、自分を主張するとはどういうことか。
  • ないないづくしの中で、産業を育成するための軸をどこにおくべきか。
  • 小国が生きるための「したたかさ」とは、どういう厳しさと隣り合わせか。

ストーリーは琉球王国を中心に進みますが、これが、米国と中国という二大国の中で立ち位置をみつけようとする現代の日本と重なってみえます。

いつの時代、どの国も問題を抱えているものです。それをどう乗り越えていくかですが、本書の中で琉球王国は「優秀な人材の発掘と育成」を軸にします。国土が残り、民がいれば王府の形そのものは問わない、という主人公の発想は既得権を打破するための、もっとも基本となる思想です。

そしてこれは会社経営にも通じるものがあります。会社組織の維持のために社員を使うのではなく、社員が満足な生活を送るために、組織の形は変わってもよい、ということです。

ただし、形は変わっても経営哲学は不変です。一貫性と柔軟性の両立は難しいテーマですが、何を守り、何を変えるのか、これこそが経営の醍醐味なのだと思っています。