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NHK番組:日本の、これから「就職難をぶっとばせ!」

12月25日夜の放映を観ました。たくさんのヒントを頂きましたので自分なりにまとめてみます。
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2010-12-25&ch=21&eid=29586

大前提:バブル期のような超売り手市場は、戻ってこない

"もう少し待てば、この(就職氷河期の)状況は良くなるかも。" という考えはしません。
現在の状況は「社会構造の変化」である、という立ち位置で話を進めます。

事実:大学の進学率

高度成長期前は大学の進学率が10%台だったのが、現在は50%超とのこと。二人に一人が大学卒という状況で、すべての大学がアカデミズムに立脚した教育を行う必要はあるのか。これについては後述します。

日本の競争力低下による仕事減の影響を、若者に負担させすぎていないか?

就職活動中の学生は、少なからずそう思っていることでしょう。その考えは否定しません。勝間和代さんも同意されていました。
ただ、それを改めるために、現在の40〜50代の方々に早めに退いていただくという案は難しいでしょう。住宅ローンや子育ての負担を家計が負うという現実があります。

新卒一括採用をやめてはどうか?

企業側が反論していたのが印象に残りました。「まとめて教育できるので効率がよい」「同期入社組という意識は必要」など、この文化を捨てたくないということです。大企業がやる、という以上、この制度がなくなることはなさそうです。

大企業に就職したい、という意識を変えることはできるか?

海老原嗣生さんによると、大企業の雇用枠はそんなに変わっているわけではないのに就職率が下がっているのは、学生の目が大企業に向きすぎているためとのこと。大企業限定なら求職に対する採用率は 0.5 倍と悪いが、1000人以下の中小企業なら 2 倍以上と売り手市場であり、300人以下の中小企業なら 4 倍以上と、超売り手市場となっている。

会場の学生に聞いてみたところ、100社以上受けているが内定を取れないという学生の志望先はすべて大企業ばかりでした。学生はどのように就職先企業の情報を集めているかといえば、ほとんどが就職情報サイトを使うばかり。これらのサイトはビジネスですから、大企業の情報が掲載されるのは当然です。掲載費の高いところほど、前面に押し出すことはいうまでもありません。

では中小企業はどうしているかというと、内定を出しても学生に断られてしまう。その理由は親が "知名度の低い企業は不安" というため。ということでいくつかの中小企業では親向けの企業説明会を行っているとのこと。悩ましいですね。

そもそも大企業が提供しているサービスは一般に認知されており、わかりやすいです。その裏では、このサービスを実現するための特別な技術が必要であり、それらの技術は中小企業が提供しているという事実は、あまり語られません。仮に語られたとしても、中小企業の特別技術の例として番組であげられていた「卵の品質の選別」とか「髪の毛を22等分できる微細加工技術」とかは馴染みが薄く、学生にとってイメージが湧きにくいのでしょう。学生にとって親や周囲に対して胸をはれるブランドイメージを有しているのは大企業であり、また雇用安定や労使協定が遵守されているという安定性が望ましいことは否定できません。

中小企業への就職を支援するアイデア

海老原嗣生さんの提案は面白かったので、私のコメントを含めて記載します。

  • (異分野を含む)中小企業同士での合同新人研修

大企業が一社で行うレベルの新人研修を、複数の中小企業同士で合同で行うというものです。同期入社という枠も会社を超えてつくられます。これなんか、沖縄県でも行政が主導して実現できるのではないかと思います。そういう主旨のNPOが設立されてもよいですよね。

  • 中小企業の社長との飲み会

面接などという堅苦しい場ではなく、社長がお金を出して、学生と居酒屋で語ろうという企画です。これも大学が主催して、毎週木曜日に定例的に行う、などとすれば出会いの場が広がります。学生は企業のことを "知らない" わけですから、そういう機会があれば視野が広がるでしょう。最近は各大学に就職を意識したサークルも立ち上がっているので、そういうところが主催してもよいかと思います。社長と呼ばれる方々は、かなり興味を示すと思います。

学生(およびその親)の不安材料の一つに、その企業がブラックだったら大変という思いがあります。そこでうっかりブラック企業に入社してしまったら、その相談を受ける専用の窓口を用意します。それでどうするかというと、上記の企画からその企業を排除してしまうのです。個人的には、窓口を用意せずとも、入社した社員の追跡調査を行い、3年間の離職率をとるとよいのではないかと思います。3年後に残っている人材が数パーセントともなれば、学生も考え直すでしょう。

ただ、これらの施策をもってしても、学生の "大企業意識" を変えるものではないかも知れません。そこはもっと掘り下げることになります。

職業校の設置

宮本みち子先生の提案です。すべての大学がアカデミズムに傾倒する必要はなく、職業を知る機会を増やし、手に職をつけることを支援する必要があるというものです。事実、他の先進国ではこのような取り組みが増えています。私も先日、沖縄で専門の職業大学を設立してはどうかというシンポジウムに参加してその意義を知ったところでした。

これに対して「大学はそのようなところではない」「手に職をつけることと、プロとして職務を全うすることは意識が違う」という反論がなされましたが、それは社会構造の変化を前提にしていない、と再反論されました。現状は大学に入ってもすでに1年生から就職を意識した生き方を迫られており、3年生あたりから授業に出ず、就職活動ばかりやっています。すでにアカデミズムとしての学問大系を学ぶ機会が激減しているのです。また、手に職をつけることが目的ではなく、世の中にはどういう仕事があるのかをリアルに知ることが重要です。現に学生は大企業が行う最終サービスイメージしか知らず、その中でどういう仕事が行われているのかを学ぶ機会がありません。

他の先進国の真似ができるのか

勝間和代さんの提案では、雇用の流動化を促進し、新卒と現役世代という垣根を取り払う提案がなされましたが、その前提として「職を失っても給与の90%を2年間保証する」「多様な再就職支援プログラムが提供されている」「子育て負担の軽減、例えば大学の教育費ゼロ化」といったさまざまな支援策も同時に行われる必要があります。北欧はその先進国ですが、鈴木文部科学副大臣によると、そのために税金を今の4倍にあげることを日本国民が同意できるか、という難問があるとのこと。確かに国民的議論に発展することでしょう。総意をもって実現する、ということを目指すなら長い時間がかかりそうです。

私見:就職の本質

番組では、就職問題は若手だけではなく日本全体の問題である、という形でまとめられました。異論はありません。

ここでは、さらに自分なりに考えてみます。大企業に就職したからといって安定なのか、といえば経験上、そうではありません。大企業は「儲かるフレームワーク」の構築と維持が仕事です。フレームワークとは枠組みのことです。この設計に携われる人はほんの一部で、大部分の社員はフレームワークの維持にあたります。維持といっても単純作業ではなく、知的創造力をもってフレームワークを日々、形をかえながら保守します。フレームワーク内部で動作するコンポーネント(個々の部品)にも仕事の面白みがありますが、そこは実際には中小企業が請け負っているところが大きいのです。

フレームワークの維持という仕事は人が変えられるようになっています。ある程度の学力スキルをもった人で置き換え可能なように設計されているということです。そして中小企業が提供するコンポーネントも変えられるようになっています。いずれも目的は "競争を促す" ためです。量的な(価格的な)競争と、質的な(性能的な)競争の両方があってはじめて優良なサービスへと鍛えられます。それをもって海外で闘うのです。そこに安定という発想はそもそもなく、あるのは競争にチャレンジするという意欲をもった人を集めることです。

つまるところ日本の成長力を高めるために、競争に身を投じるのです。それを避けることはできません。であるなら、そこに「起業」という視点があってもいいのではないでしょうか。今回の番組で、起業家の視点が欠落していたようにみえていたのが残念でなりません。

大企業だろうが中小企業だろうが、仕事をするということは競争社会で鍛えられることです。それは決して辛いことではありません。人間が鍛えられ、立派な大人になっていくということです。闘いの場を与えられることが幸福であり、いわれたことをやるだけで給与をもらうのは仕事ではなく作業です。その部分は現在、海外のアジア勢が担っており、遠くない将来、機械化されるでしょう。作業とは人間の仕事ではないのです。真の仕事は競争の中にあり、仕事をとおして人間は鍛えられていくのです。

就職はゴールではなく、闘いの場を選ぶ行為に過ぎません。そして規模の差こそあれ、他者が設定した場です。そう考えると起業とは、自ら闘いの場を設定することです。どちらにせよ、競争社会に身を投じるという覚悟は同じです。

高校、大学、専門学校、または NPO いずれでもよいので、そういう考え方をどこかのタイミングで学生に伝えることができれば、と思います。同時に、チャレンジ精神そのものを大切にし(結果はどうあれ、ということ)、失敗しても再チャレンジできる社会をつくることこそが、本質的な解決になるのではないかと考えています。

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