「非効率な会社がうまくいく」- 非効率な経営哲学と、それを支える IT の関係を考える

昨日、当社が所属する「関東沖縄経営者協会&IT協議会合同新春講演会」に参加してきました。その講演者である中島セイジ様のお話が、ぐっときました。

かいつまんで要約すると、次のようになります。

  • 売上至上主義で、自社利益だけを考える経営は今後、破綻するだろう。
  • 「先義後利」という考え方、まず自分は何によって社会の役に立つかという経営哲学を優先すること。その考え方に賛同していただけるお客様から、応援代をいただく。その応援代への御礼として、自社製品を使ってもらう。そういう枠組みがいい。
  • 効率より手間をかける、の真意は、お客様に対するサービスに手を抜かず、あわせて社員の成長と地域社会への貢献を実施すること。売上至上主義からくる効率化は、アルバイトを即戦力にする代わりに、サービスの本質を考えなくさせる。(マニュアル人間になる)
  • お客様に納得いただくことより、お客様の心を動かすサービスをしよう。
  • マーケティング理論より、個々のお客様に接していこう。

これらが重視される背景として、一つのものをつくれば営業力で大量販売できるという時代が(先進国では)終わったということがあります。確かに Apple のように同じ製品を大量販売できるビジネスもあるのですが、すべての企業がこのモデルを目指すのか、ということも、立ち止まって考えてみる必要があるでしょう。(ちなみに Apple 製品も、もともとはニッチ層に受けており、ファンをつくってきました。私もそういう Apple 信者の一人です。今、その非効率な戦略が意外にも花開いたと考えることができます。)

中島氏の書籍では、非効率と思われる経営を貫き、今の地位を気付いた会社の例が満載です。この一つ一つに重みがあり、私が同じ局面に立った時、同じ経営判断ができるかどうか、悩むことばかりです。それだけに、これらの経営判断に感動があります。詳細は書籍に譲ります。


さて、私の仕事は "企業の IT 化" ですが、これは著者がいう非効率化と相容れるのでしょうか。IT といえば経営者にとっては効率化の代名詞に見えるかも知れません。そのことを昨晩、考えてみました。

結論は、経営の非効率化をバックアップする IT の存在意義はある、です。

そもそも IT を、単なる紙伝票の電子化や、データ管理というレベルで語るのは、1980 年代の "OA化" の発想から抜けていません。このレベルで IT の恩恵を受けることはできていないと考えます。たまに「IT 化したけど紙が減らない」「IT 化によって事務員の削減ができると思っていた」とおっしゃる方がいますが、はい、それは大きな間違いです。IT 化はそういうことのために行うものではありません。

IT 化の恩恵は、組織内のスタッフが "最新の情報" を "共有化" することが "出発点" です。最近の言葉でいえば、見える化です。見える化はゴールではありません。見える化することによってはじめて、スタッフが会社の問題を知り、チームで改善しようとする活動機運を生み出せるのです。そこから経営哲学と合致させるのが、経営陣の仕事でしょう。つまり社長の経営哲学を浸透させるために、情報の共有化は最低条件であり、これを支えるのが IT ということです。

本来、SFACRM と呼ばれる営業支援、顧客管理ひとつとっても、会社の経営哲学が反映されていなければいけません。単なる営業報告書の電子化や、メール配信ではない、ということです。どのお客様がどういう要望を出され、それに対して組織全体として解決しようとする、そのノウハウを共有するというプロセスを支えるために、どうしても独自のシステムが必要になるでしょう。そのようなシステム開発を支えるための基盤として、当社が提供する Wagby はお役に立てると思います。

非効率(だが意味のある)経営を支えるためには、哲学に裏打ちされたその会社独自の IT が必要だ。

このような提案を積極的に行っていきたいと、気を引き締めたところです。期待を裏切らないように Wagby を良くしていきましょう。