業務効率化のITから、経営理念を支えるITへ

冒頭から質問です。皆さんが経営判断を行える立場にあったとして、次のような局面でどのような判断を行いますか。

「ITを活用した販売方式の選択」

(a) 今の時代ならグルーポンのようなサービスの利用がいいだろう。粗利が小さくても大量に売れるしかけが IT の力だと思う。

(b) 当社の製品にはこだわりがある。このこだわりに共感する人を探し、その人と長くお付き合いしたい。販売量よりも、購入者と長くつきあえるかどうか、を重視する。


もう一つ質問です。皆さんの会社が取り扱っている製品・サービスを告知するために IT を活用しようとしています。どのアプローチを採用されますか。

「IT を活用した広告活動の選択」

(a) 検索エンジンの上位に掲載されると効果があるため、SEO 対策に予算を投入する。やらせかも知れないが、当社の評判が上がるようなブログを有料で書くという人がいれば、お願いする。その他、いろいろな手法に予算を投入し、当社の評判を上げていく。

(b) 検索エンジンの上位に掲載されるよう、Webサイトのコンテンツを充実させる。デザインはプロに委託するが、記事内容は自社およびファンとなっていただいたお客様の声を反映させる。評判を上げる手法に予算を使うのではなく、中身の充実に予算を使う。


どちらも IT を活用した現代風の営業活動ですが、その手法はまったく異なります。

これまでの大量販売を支える発想は (a) 方式でしょう。(a) 方式は即効性があり、結果がすぐに手に入ります。(b) 方式は時間がかかることが懸念されます。(実際、いつ効果がでるか、誰も保証できません。)

しかし右肩上がりの経済成長が終焉し、市場規模が縮小する時代においては、(b) 方式が時代に適合するのではないか、と思います。顔の見えない *消費者* に大量に購入してもらうより、*ファン* を増やし、数は少なくとも確実に購入していただける方とのつながりを強化することが重要になる、ということです。

ところで (b) 方式の実践には、いくつもの課題があります。まず会社の経営理念を社員が共有し、それをお客様に伝えるという使命感をもって業務にあたろうという意識改革が求められます。さらに、その意識を持てたとして、それをどうやってお客様にお伝えするのか、という壁もあります。

その「コミュニケーション」を潤滑にするために IT を効果的に使えると、いいですね。1980 年代のキーワードとなった "OA化" は、業務効率化を求めるものでした。それから 30 年。今の IT は "つながり" を見える化するまでの力を持ちました。この能力を十分に活用することで、本来目指していた会社組織の在り方を実現することができそうです。