東京電力を非難することでは何も変わらない。その先を考えよう。

福島原発の問題で、東京電力に責任があるという見方は否定しません。
しかし、東京電力は誰のためにインフラを整備してきたのかを忘れてはなりません。その電力を使ってきた住民、企業が東京電力を非難することには違和感を感じます。それは先の大戦で日本国民が戦争責任を一部のリーダーに肩代わりさせた構図に似ているというのは、言い過ぎでしょうか。この状況を見過ごせば、日本はまた同じ轍を踏むのではないかと危惧しています。

最初の立ち位置は東京電力の非難ではなく、東京に電力を集中するという生活様式を冷静に見つめ直すところから、ではないでしょうか。私自身、東京はとても便利でよくできた都市だと実感しています。だからこそ、東京の良さを残しつつも、都民(もしくは関東県の住民)として見直すべきところは見直すという気持ちを持つ "きっかけ" にすることがのぞましいと考えます。誰かに責任を押し付けるムードを変えていこう、ということです。

その上で、東京一極集中の問題と、電力供給量の削減という状況に住民がどう向き合えるかという議論を進めるべきです。短期的には、この夏場のクーラーを控えることが求められるでしょう。沖縄のように、かりゆしウェアをビジネスの正装にするという案も効果があると思います。ビジネスアワーを午前中に限定し、午後は自宅勤務にするといった運用面の変更もあるかも知れません。さまざまな知恵を出し合って乗り切ることができれば、日本は世界中の模範になることでしょう。

そして中期的には、東京一極集中の是正を行うことが良いと思います。仮に関東直下型の地震が発生して首都機能がマヒした場合、日本全体が政治的にも経済的にも機能不全に陥ることが懸念されています。それを避けるには国の機能を分散することです。道州制への移行を前倒しし、東京が担ってきた多くの責任を地方に委譲する。それはもちろん人口の移動も意味します。

今の世論では、これ以上の原発開発は難しいと言われています。かといって火力へ戻ることは(石油価格の上昇傾向から)電気料金アップにつながります。周波数の統一による関西、中部電力から東京への送電という話もありますが、これは問題の先送りです。目線を変えて、現在の東京電力が供給可能な電力から、維持可能な住民の人口はどのくらいなのかを議論してはどうでしょう。無理を通すのではなく、持続可能な都市の規模について考察することがあってもよいと思います。

さらに長期的には、日本全体の問題として、原発に変わる新エネルギーの実現を目指すことになるでしょう。現時点では、多くの代替エネルギー案がありますが、これと決まったものはありません。日本の国土にあった新エネルギーは何か。原発ももちろん、これまでのノウハウの蓄積から選択肢の一つとして残るでしょうが、今回のような災害時での影響が大きすぎることを自覚しました。事故時の保証負担を考慮すると、決して安い電力ではない、ことがわかったということです。これを含めた電力料金の再計算を行うことで、これまで不利と思われてきた代替エネルギーが見直される可能性があります。専門家による議論が活発化することを期待しています。