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「就業力」とは何か

先日、琉球大学観光産業科学部が取り組む「就業力」強化についてのシンポジウムがありましたので、参加してきました。
http://www.ryudai-career.org/info/detail.php?topics_id=32

この4月から大学のキャリア教育が義務化されることとなったとのことで、琉球大学では観光産業科学部が先行して先導的モデルの取り組みを開始しています。

これは就職活動支援ではなく、幅広い職業人育成のための取り組み、という位置づけです。もちろん、現在の厳しい雇用環境への対応にもつながります。

大学と企業との連携というと「産学官」というキーワードを思い浮かべますが、ビジネス的な成功例は少なかったと思います。今、就業力というキーワードで再び、産学官の連携が図られるのかがポイントです。私は連携は大切だが、目指す方向性を早い段階で議論すべきだと感じています。

沖縄の人材育成のジレンマ

大学の視点でみた場合、どのように人材育成を行っても、魅力的な雇用機会が極めて少ないという問題があります。この解決のためには人材育成とセットで、その受け皿となる企業の創出も必要だということになります。しかし大学が会社を起こそうという試みは、まだまだ事例が少ないところです。

次に企業側の言い分としては、優秀な人材であっても、最初は県内企業の給与体系に甘んじてほしいという要望があります。社会人経験者で、仕事と一緒に転職する人であれば給与の担保ができますが、学生にはそういうわけもいかず投資になります。そして県内企業の多くは、研究開発費(人材投資)が極端に少ないという現実があります。

さらに官の立場としては、大量雇用を約束する企業に対して補助金を出すことが大義名分になります。その視点では県内企業はいずれも小さすぎるため、補助金が出しにくいのです。さらに研究開発投資の公募をすると、手を挙げるのは県外企業というジレンマもあります。

最終的に学生の立場としては、力をつけるなら県外へ出るし、県内に残るなら公務員指向という話になります。さて、どこから手をつければよいのでしょう。

解決の糸口を探る

最近、興味深いブログを拝読しました。
「長期的な安定性を求めるならベンチャーにいくほうがいいかも」
http://blog.livedoor.jp/kensuu/archives/51448658.html

私もベンチャー企業に属する立場から、この指摘はなるほどと思います。

ベンチャーはたくさんあり、入社難易度が低い割に仕事の幅が広いので入りやすいのでおすすめです。

ベンチャー企業で "稼げる仕事を作れるスキルを身につける" ことが重要ということです。

このブログからのリンクで、次の記事も興味深いです。
「新)4つの労働者階級 」
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100914

(1)の人には、大企業の社員や大組織の構成員(公務員など)と、自分で事業を始める“起業家”の2種類の人がいます。(1)には“超保守エリート”と“リスクテイカー”が混在しているのです。(なお、優等生たる“保守派エリート”の大半は一生(2)にいます。)

スケールの違いはあれど、本質的には超保守エリートとリスクテイカーは同じです。つまり (1) の分野 - 「仕組みを設計する人」は必ずしも大企業でなくともかまいません。この層が厚みを増すことで、ビジネスチャンスと雇用が広がることが期待できます。

学生の就業力を高めるために

沖縄県の雇用政策は「言われたとおりに仕組みを作る人」や「仕組みどおりに働く人」の層を増やすことで、大企業の誘致を図ってきました。これは短期的な失業率改善効果がありますが、本質的な解決ではありません。私は「仕組みを設計する人(リスクテイカー)」層の充実化に目を向けるべきだと考えています。

学生の皆さんに伝えたいのは、現時点での給与や待遇、安定性で就社を目指すことはリスクがあるということです。約束された未来ではありません。私は公務員も遠からず大部分が民営化されると予想していますので、安定を目指して公務員になろうというのは少し違うと考えています。公僕になりたいという人がなるべき職業です。

その上で、「仕組みを設計する人」になることがこれまでの企業内出世と同義だとするならば、ベンチャー企業に飛び込んで仕事の経験を積むことが結果的にはプラスに作用すると思います。目先の給与や安定性よりも、どのような仕事経験ができるかを 20 代では重視した方がいいということです。

そこで、次のような仕組みがあるといいのではないでしょうか。

  • ベンチャー企業(社歴が長くてもよい)だが、この分野で全国・世界と勝負できる、または勝負したいと思っているという会社を選抜し、学生へ紹介する。
  • そういうベンチャー企業への雇用を援助する。例えば新規採用に対して、3年間の給与の半額を補助金で支出する。
  • 3年後、ベンチャー企業が成功していれば、その企業が継続雇用するだろう。そうでなくとも、この経験をもって十分に有利な転職または起業が可能である。
  • 入社後、仕事の内容がおかしい(ブラック企業?)と感じた場合は任意に退職できる。それをマイナスとしない。

ベンチャー企業は玉石混合ですが、「仕組みを設計する人」が増えることで結果的に安定的雇用が創出されるということを産学官で合意し、玉を伸ばしていく政策です。

そこで経験を積めば、仮にベンチャー企業が解散しても、その人たちが次のベンチャー企業を興すきっかけにつながります。そういうサイクルを回そうということです。

向上心・向学心を持つ

どの企業も規模の大小を問わず生存競争にさらされています。学生にその必死さを理解してもらうというのは大人として虫が良すぎると思いますが、それをわかりやすく言うならば「向上心・向学心を持つ」ことです。

今の能力があれば会社でやっていけるだろう、という甘い考えでは、ベンチャー企業では通用しません。そこそこの能力は求められていません。石にかじりついてでも... という気概で自分を常に向上させていかないと、差別化にならないのです。人間を鍛えるとは、そういうことです。その結果、「仕組みを設計する人」になれるチャンスも巡ってくるでしょう。言われたことだけをやっていればいいという気持ちでは、巡り会うこともありません。

再考:就業力とは何か

私は産学官が連携し、「仕組みを設計する人」の層を厚くする方向で議論することが長期的には雇用増大につながると考えています。学生の就職難の一因は、大企業・公務員ばかりに目がいき、ベンチャー企業の特性を知らないこともあります。

就業力とは、大手企業に採用されるスキルを得ることではない。仕事を通して人生を豊かにするという考えを身につけるものであり、仕事が変わっても向上心というマインドを失わないことの重要性を学ぶことだと思います。「変化を恐れず、むしろ楽しめる人になろう」というとわかりやすいかも知れません。

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