持たざる地方が強くなるためには、点ではなく面で勝負することが必要

今週号の日経ビジネス (2011.5.23) の九州特集にまつわるネタです。
通勤利用者も少なく、ドル箱路線もない JR 九州が、どのような営業戦略を立てたのか。それは「乗車率100%のローカル路線」を増やすということ。ローカル路線に資本投下し、観光列車をつくる。これを呼び水に、前後の主要路線の乗車率を上げる。このネットワーク全体で稼ぐという発想は、個別の部署からは出にくいでしょう。まさにトップの決断が必要です。

沖縄の観光も、施設毎にがんばることはもちろんですが、これを面として魅せるテクニックがあると、より良くなると感じます。誰がコーディネートするのかという問題はありますが、やってできないことはない。まだまだ可能性を秘めています。

これは私たちベンチャー企業にも同じことがいえます。小さくても何かに特化した技術を集めて、複合型で勝負することがいいでしょう。お互いに補完できる技術をもちよって、新しいサービスを提供するということです。しかし現実に難しいのは、技術に特化した会社同士を結んで、新しいサービス体系としてまとめるコーディネータ役の不足です。シーズとニーズの両方を発掘し、それをつなげるとなると、百発百中とはいきません。責任をなすりつけあうのではなく、小さな実績を着実につみあげることのできるリーダーが求められています。

つまり "面で勝負する" ということは、"勝負をしかけることのできるリーダーの存在" が不可欠、ということです。ところで私は、補助金を狙いにいくリーダーでは、うまくいかないと考えています。補助金は関係者の誰もが反対しませんが、実は二つのデメリットがあります。

  • 補助金をとるまでは動かなくていいと考え、時間を浪費する。
  • 補助金によって、本来解決しなければならない根本的な問題が先送りされる。

ここで根本的な問題とは、ビジネスモデルの構築を指します。組織にとって最も重要なのは、儲かるビジネスモデルを得ることがですが、これが実に難しい。補助金は、この困難さから逃げることができます。しかしこれによって結局、補助金がなければ何もできないようになってしまうのです。

ちなみに当社は研究開発助成をよく利用していますが、それはビジネスモデルの構築から逃げてはいません。むしろ市場開発に力を入れ過ぎ、空回りするくらいです。補助金はビジネスの立ち上げには有効な局面もありますが、依存してはならない。単発ならともかく、継続する補助金はリーダーにとって害悪です。もし補助金が切れたらビジネスが止まるということであれば、それは自立ではありません。記事における九州の事例はそこまで詳細にはわかりませんが、少なくとも「自分たちで何とかする(補助金には頼らない)」と汗をかいた結果ではないかと予想します。よって私は沖縄の自立は特に継続的な補助金を断ち切ることが必要(代わりに何を得るかは別の議論です)と主張しています。

ところで日経ビジネスの記事では、起業化精神に溢れる九州出身の創業者名が掲載されていましたが、IT系会社の創業者が多いということに驚きました。ここには明記されていませんが、インフォテリアの平野社長も熊本出身です。私は単純なので、こういう記事を読むとすぐ、「よし、私たちもこれに続いて、次の時代をつくってみせる!」と思ってしまいます。