ジャスミンソフトは創業から10年が経過し、11年目に入りました。

本当はこの話は3月に書こうとしていたのですが、ちょうど震災があって、伸び伸びとなってしまいました。
ベンチャー企業の10年生存率は5%程度と聞いたことがあります。残っているということは少なくとも誰かの役に立っているということですが、大きく儲けがでている状況ではないので、経営者としての自己評価は「まだ、ひよっこ」の域を出ません。ただ会社経営は毎日が勉強で、代え難い経験を得られています。

ここで当社のこれまでの歩みを、ざっくりと振り返ってみます。

第I期

創業2001年〜2004年上半期までの4年間。
Webベースの業務アプリケーション受託開発という立ち位置で経営を行いながら、パッケージ開発を指向しました。この時期、地理情報システム(GIS)に焦点を合わせ、5 種類の製品を出しています。しかし結局 GIS 分野は市場が広がらないまま、Google Maps の登場で撤退を決めました。唯一「住所正規化コンバータ」だけが残り、現在も売上に貢献しています。
この時代、Wagbyは社内用ツールという位置づけでゆっくりと整備していました。数あるネタの一つというものでした。

第II期

2004年下半期〜2008年上半期までの4年間。
会社の立ち位置を「自動生成エンジンの提供 + 生産性の高い受託開発」と再定義し、Wagbyの前身となる製品をパッケージ化して市場に投入しました。沖縄振興開発金融公庫からの増資を受け、東京に事務所を構えます。製品販売がどういうものかもわからないまま、さまざまな展示会に出展し、とにかく出会いを求めて動き回りました。
2006年に製品名を「Wagby」に変更します。実はこの頃、自動生成という技術が市場に受け入れてもらえないという状況から、社内では "このままでいいのか" という動揺が広がっていました。このとき「受託案件を減らしても(売上が減っても)Wagby への投資を継続する。」という方針を出したため、それに納得できないという社員が去っていくという経験もしました。幸いにも創業スタッフは全員残り、その前後に加入したスタッフはWagbyをやりたくて入社してきたため、社内の結束は強まりました。

第III期

2008年下半期から現在まで、ほぼ3年間。
ジャスミンソフト=Wagbyの会社」というイメージが地元・沖縄だけでなく全国に定着しました。Wagbyに関わらない受託案件はすべて断り、経営資源を集中しています。あいにく不況と重なって、給与水準が上がりにくい状態が続いていますが、社員の退職率は非常に低く、ノウハウの蓄積による生産性向上率も年々、高まっています。これから開発案件が増えてきたとき、私たちの提案(自動生成技術による生産性向上)が受け入れられるようになると肌で感じています。

振り返り

2011年、とある経営コンサルタントの方から「先義後利」という考え方を教えてもらいました。社会が納得できる義をもっていれば、利は自ずとついてくる。その言葉の重みを実感できるようになるまでに、恥ずかしながら10年かかりました。今は経営判断に悩んだとき、この言葉を思い出すようにしています。

会社創業時は折しも IT バブルと重なった時期でもあり、他社はみな上場、IPO を目指していました。もちろん私も刺激され、夢をみました。しかし実際に製品を販売するのは簡単ではありません。粉飾決算のニュースを耳にするたび、社長の悩みの深さを想像します。それでも真面目にやるしかない。当社にお声掛けいただいたベンチャーキャピタル様すべてに「売上が立つまで上場の話はしない。」と断りましたが、今思えば良かったのだと思います。

今でこそ「自動生成技術を使ってお客様、開発者、ユーザ(システム利用者)をハッピーにしましょう。」と語っていますが、そもそも創業時にはこのような明確なビジョンはありませんでした。走りながら会社の立ち位置が固まってきたのです。いい加減だなぁとも思いますが、実際に動いてみないとわからない、ということも経営を通して学びました。

Wagbyへの機能追加をやってもやっても評価されないという時期があって、これには私もメンバーも精神的にへこみました。もうこの製品はダメかもしれない、市場に受け入れてもらえないかも知れないという不安が何度もよぎりました。一方で、たまたまWagbyを知ったお客様から、すごい製品だと褒められることもあり、そういうときは有頂天になります。この激しい精神的落差の中で、少しずつ自分たちとお客様との距離感が見えてきました。この「やりとり」が仕事の醍醐味であって、関係性の構築を無視して技術だけで製品を成長させることはできないこともわかりました。そういう視点で改めて他社をみますと、皆、当たり前のようにきちんとやっていらっしゃいます。こういう基本的な認識さえも、経験を重ねて、ようやく自分たちの中で理解できるようになりました。

10年間の経営でほっとしていることは、給与の遅滞を発生させなかったことです。これは自分にとって奇跡に近いことです。困った時に、どこかから仕事が入りました。これについてはただもうひたすら感謝するのみです。私の力ではありません。助けられているとしかいいようがありません。それを噛み締めるようにしています。今の私にできることは、受けた恩義を忘れないことだけです。

市場が厳しいときほど、必死にやっている人達の重みを肌で感じます。他社ががんばっている姿を見るたびに、私たちはまだまだできることがあると気付かされます。仕事を通して切磋琢磨できることは、人生を豊かにするものです。お金は必要ですが、目的ではない。人生を豊かにできる機会に巡り会っていることが大切なのだと実感しています。

これからのジャスミンソフト

2015年までに、国内でのノンプログラミング開発という市場でWagbyの知名度をトップにしましょう。今、現場レベルでのアプリ開発といえばExcel、Access、FileMaker が御三家でしょう。しかし生産性の高さでいえば、Wagbyはこれらの10倍を超えるレベルに進化しました。そしてWagbyを海外にも展開し、世界中の現場のIT化を支援できる企業になりたい。目線を高く、そして日々、やるべきことをしっかりやっていく。その先に、夢の実現があります。できるかできないか、という議論は、もう社内では終わりました。今はただ、そこに向かって毎日、手を抜かずに進むことだけを考えています。

今後とも応援のほど、どうぞよろしくお願いします。