起業が普通になることが先進国の経済成長につながる - 沖縄学生ビジネスアイディアコンテストに思うこと

私は残念ながら参加できませんでしたが、「第5回沖縄学生ビジネスアイディアコンテスト最終発表会」は大盛況だったようで頼もしく思います。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120826-00000009-tkwalk-ent

すでに日本を含む先進国では大企業への就職ならびに正社員として働くことが現実的に難しい状況です。その上、自分が働く企業が "ブラック企業" (人を使い捨てにする) ではないかと疑い始めれば、就職活動もめげてしまうことでしょう。

先週FaceBookで、知人から次のサイトを教えてもらいました。
「今起きていること。日本人の賃金を下げよ。リストラせよ。雇うな」
http://www.bllackz.com/2012/09/blog-post_8.html

第二次大戦以降、先進国による植民地政策は影を潜めました。しかし国力の差(貨幣価値の差)を利用した多国籍企業の活躍は、新しい形の植民地政策と言えるかも知れません。そうは言っても現地からすれば仕事が増えたことは事実であり、結果的には記事にあるように

グローバル経済が浸透して世界の富が平準化するまでデフレが続く

という予想はあり得ます。私自身は、もう20年も前になる日本のバブル崩壊以降の景気減速は一時的ではなく構造的なものだろうという意を強くしていたので、この視点は驚くものではありません。事実、日本だけでなくすべての先進国は高い失業率に苦しんでいますが、打開策はないようです。*1

さまざまなベンチャー企業の台頭による多様性が日本を救う

日本企業の99パーセント以上は中小企業です。これまでは大企業を頂点とするピラミッド構造で業界をつくってきましたが、大企業が多国籍化する中で、二次請け・三次請けの仕事が他国へ流れるようになりました。大企業と一緒に海外シフトする中小企業もありますが、雇用は現地で賄うのが基本です。では日本に残った人材はどうするべきか。

それでも残った数少ない企業を地元に誘致して、大量の雇用確保を、と思う人が多いですが、私からみると延命策であり、根本的な対応ではありません。大量雇用は、より条件の良いところへシフトされるという前提があり、それ故に主に給与面が低く抑えられるという現実があります。よって数百名の大量雇用を行う企業を一社誘致するのではなく、社員規模が数名のベンチャー企業を百社、創業させる方が、地域発展の可能性が高いというのが私の考えです。

ベンチャー企業というと、どちらかというとキワモノで、一発当てて株式公開するか、さもなくば数年で解散というイメージが強いようです。しかし株式上場を必ずしも視野に入れず、細く長く続けようとするベンチャー企業を立ち上げようとする起業家もいます。

「それはいわゆる零細企業であって、下請けに頼るしかないでしょう?」

いえ、ベンチャー企業と零細企業には本質的な違いがあると考えています。ベンチャー企業とは

  • 独自の技術(または独自のビジネスモデル)をもち
  • 自社ビジネスの開花は社会構造の変化を促すという自覚をもち
  • その成功を第一の目標として人生を燃やそうとする人達

が集まった集団です。売上規模や社員数では零細企業と同じですが、野望があるかないか、が違います。その野望とは、ちょっと儲かればいいというものではありません。自分たちが信じるビジネスモデルの成功により社会を変えてみせる、という野望です。

その視点に立てば、創業10年でも20年でも、開花途中の技術を磨き続けているのはすべてベンチャー企業です。

そしてこれらの集団は昔から日本に存在していました。ただし企業としてではなく、大企業の「隠れプロジェクト」として、です。世界中を席巻したヒット商品の多くは、社内でこっそりと開発されてきたものが多いということは良く知られています。しかし今、多くの大企業はそれらの隠れプロジェクトを認めていません。その役割を担うのが、新しいベンチャー企業です。

沖縄をベンチャー企業の集積地にすることは十分、可能である

沖縄の出生率の高さは大きな可能性です。そこに適切な教育システムと、独立心を育むマインドをしっかり植え付けることで、多くの起業家が登場する土台ができます。世界を変える可能性を秘めた、クセのある企業が100社、1000社と登場すれば、どれだけワクワクすることかと思います。もちろん、そのようなベンチャー企業で働くということは、自分の全能力を投入してもなお成功するかどうか、わからないという過酷なプレッシャーがあります。しかし現在、多くの人が実感している大量雇用型企業の下で受けるストレスと違い、自分の成長に貢献する種類のものです。そしてベンチャー企業の多様性は、社会全体の活性化にも寄与することでしょう。

それを支える大人達は、すぐに(ベンチャー企業に)結果を求めない肝要さが求められます。目の前の小さな売上確保に走らずに、大きなビジネスで成功するような指導をするのです。当然、お金もかかる話ですし、リターンを得るための期間も長くなるでしょう。であれば、それを地域ぐるみで支援するという発想もありえます。平たくいえば、若者の可能性を信じて、彼らが正しく生きようとする姿勢を応援することが重要であり、その成功による果実は、ご褒美という気持ちで臨む、という社会を目指すということです。

一見、悠長なことのように見えますが、このアプローチが先進国を再び輝かせることになると考えています。特に教育界の方々へは、ブラック企業でもいいからとりあえず就職しろ、ではなく、このような社会構造の中で若者を支援したいというビジョンを行政に働きかけていただければと願っています。それをきっかけに企業誘致による雇用確保から、ベンチャー企業の育成を充実させる方向へ舵がきられれば、若者がワクワクし、大人がその成長を楽しむという社会へ転換することができます。

*1:もうすぐ国内で大きな選挙がある見込みですが、例によって政治家による「雇用を確保します」発言が乱発されるのだろうと思うと気が滅入ります。