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Wagby のマーケティングの歴史からみた、市場創造の難しさ

2006年5月に「Wagby」を発表してから、この10月で6年半が経過しました。この間、マーケティング(どうやってこの製品を知ってもらうか)は苦労の連続であり、今も試行錯誤中です。先週、Wagby R6.8 の出荷というヤマ場を超えたこともあり、このテーマについて振り返ってみようと思います。

2006年から2008年:「自動生成」と「Webデータベース」という二つの切り口で悩む

Wagbyは当初、同業であるシステム開発会社(SIer)へ売り込みに行きました。一部の企業は興味を示したものの、大半の技術者の反応は、自動生成という技術基盤そのものが信用できない、というものでした。過去にブームとなり、その後失速したCASEツールを思い起こさせたのでしょう。また、大手企業の役員から「このくらいなら、当社の技術開発部でもすでにやっている。」と失笑されたこともありました。製品の思想や価値を理解してもらえない中で、説明に苦しんでいました。

この当時はまた、中小企業もオフショア開発に踏み込まないと生き残れないという風潮がありました。しかし現実には多くの企業で成果が上がらず、悩んでいたときです。私はその中にあって「オフショアよりも自動生成技術の活用で、国内の開発拠点を残そう。」とアピールしたのですが、それもうまくいきませんでした。ツールを使うより、人件費の安い開発者を探す方が現実的と判断されたのでしょう。

そのような中、週刊アスキーにWagbyが掲載されました。これはSIerではなくエンドユーザー向けの紹介記事でしたが、「誰でも簡単にWebアプリケーションが開発できる」というインパクトは大きく、無償体験版(現在のトライアルキット)のダウンロードは3,000件/月というペースになりました。そこで私たちは Wagby を直接、エンドユーザに知ってもらい、そこで利用実績を上げるという方針に切り替えました。

そこで選定したキーワードは「Webデータベース」でした。そのイメージは「簡単に、Excelで管理しているデータをWeb化できる」というものです。Webデータベースを標榜していた競合製品はすでにありましたが、このキーワードを使い始めて半年ほどで、Google で「Webデータベース」で検索するとトップに Wagby が表示されるようになりました。(ちなみに当社はこれまで一度も SEO 対策、というものは行っていません。コンテンツを地道にアップデートし続けています。)

しかし別の悩みも登場しました。お客様の製品に対するイメージが「簡単」にとどまってしまい、「安く Excel を Web 化するソリューション」で固まりそうになったのです。私たちの目標はWebエンタープライズアプリケーション - いわゆる基幹系での採用であり、このままでは誤ったメッセージを発信することに気付きました。受けは良かったのですが、このキーワードを捨てようと決めました。

2008年から2010年:「自分でつくるERP」と「ソースコード自動生成」

2008年5月にWagbyの新版であるR6シリーズの提供を開始しました。そのタイミングで、"ERP" というキーワードを盛り込みました。日本における ERP 導入事例のほとんどは「カスタマイズありき」であり、製品ライセンスよりカスタマイズ費の方が高いという状況が続いていました。そうであればWagbyで設計書を作成した方が、将来にわたる変更を担保できる、とアピールしたのです。自動生成というキーワードも併用しましたが、技術ではなく業務システムを意識した説明を行ないました。

振り返ってみれば、これもアピールに成功したとは言い難いところです。ひとえに Wagby のようなツールがまだ少なく、理解してもらうのが難しいところでした。競合製品である GeneXus や WebPerformer を調査されていたお客様は Wagby のアプローチに興味を示してもらえましたが、それでも開発市場全体からみると微々たるものです。もっとよい切り口はないだろうかと日々、悩んでいました。

2010年から2011年:「ノンプログラミング」ではどうか?

2010年の後半から「ノンプログラミング」というキーワードを前面に押し出すようになりました。これは現在も継続しており、Googleで検索するとトップはWagbyが表示されます。トップをとるまでに半年以上かかりましたが、以後は今のところ不動のポジションになりました。(ちなみに2位以下はよく変わります。今日現在の2位はジャストシステムさんのUnitBaseです。こちらはノンプログラミングとWebデータベースの二つのキーワードを使われています。)

ノンプログラミングには、簡単だが奥が深いという意味を込めたいと願っていますが、これはまだ検証中です。ただ同業他社ツールもこのキーワードを掲げているものが多くあるので、今後、このジャンルで市場をつくることができれば良いと考えています。

そして2012年:「超高速開発」というキーワード

2012年3月の日経コンピュータ特集記事「超高速開発が日本を救う」を読んで、そのキーワードがあったかと感心しました。記事中ではWagbyも含め、さまざまなツールをひとくくりで「超高速開発を実現できる」としています。このキーワードを知ったとき、アジャイル開発とウォーターフォール開発という切り口で Wagby は語れないということも同時に気付きました。むしろWagbyの特性からは「超高速ウォーターフォール開発」という説明の方が合っているだろう、とさえ考えました。

この「超高速開発」は、まだ一般に認知されているとは言えません。しかし時代背景と、これからのニーズをうまく表現したキーワードであり、化ける可能性があると期待しています。

まとめ:市場創造は難しく、楽しい

駆け足でWagbyのマーケティングの変遷を振り返ってみましたが、新しい市場を創るというのはベンチャー企業ではとても難事業であることを思い知らされる歴史です。

とはいえ希望もあります。それは競合他社製品が増えていることです。とりもなおさず、この分野がフロンティアだと認識している人が増えているわけです。市場の創造は、競合他社が一緒になってつくりあげていくもので、競争であると同時に共闘が大切です。また、ここにビジネスとしての面白さもあります。

まだ試行錯誤は続くことでしょう。それでも、自分が信じた製品をアピールするという活動は、やりがいがあります。そして Wagby に関わる代理店様からも同じような声をいただけるのは感無量です。今日もまた、心から楽しみながらお客様先で製品のアピールを行っていこうと思います。

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