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「やりたいことをやるのか、できることをやるのか」という問いへの回答

先週、地元・沖縄の大学で学生向けに話す機会がありました。ITベンチャー企業経営をはじめて12年、これまで経験したことや学んだことを語るといえば、成功体験を伝えて学生にも創業を促す…というような講義を想像しがちです。しかし私の話はこれまで一貫して「うまくいかないという状況を、どう乗り越えて今に至っているか」ということに主眼をおいたものでした。そういう話をしながら私自身、改めて気付かされることは、成功とは何かという根源的なことです。

印象に残った質問「やりたいことと、できること」

講義時間の3分の1ほどを質疑応答に充てたのですが、その中で印象に残った質問が、これです。

やりたいことと、できることの、どちらを優先すべきでしょうか。

この回答はもちろん、人それぞれでしょう。よって、どちらがいいという答えではなく、その答えを導きだすためのヒントを示すことが求められていると解釈しました。

人は誰でも幸せになりたいと願っているが、幸せをどう定義するか

上の質問の本意は「自分は幸せになりたい。そのために...」という意図であることはわかります。ここで一歩引いて、まず幸せについての私の解釈から伝えることにしました。

私自身は会社を創業するまで、年齢的には30代前半まで、幸せイコールお金持ちになるということは実質的に不可分なものと捉えていました。しかし今は少し視点が違います。40代になってようやく、お金持ちイコール幸せと同義ではない、ということを(概念としてではなく、実感として)自分の中に落とし込むことができつつあります。お金があっても幸せとはいえない、そういう事例は現代社会にいくらでもあり、歴史をひもといても、さまざまな物語が見つかります。

その代わりにわかったことがあります。人格の高い人(人徳のある人)は、皆、幸せな状態にあります。そこに例外はありません!ただし、自分で自分の人格が高いという人はいません。自分の人格を常に高めようとしている人、というのがより正確な表現です。そういう人は総じて、廻りの人を幸せにします。その結果、その人自身がとても輝いているように見えます。そして当人は、自らがそういう環境に囲まれていることが幸せなことだと感じていらっしゃいます。まさにプラスのサイクルです。

そこで私が理解したことは、「人格を高めようと不断の努力を継続していることが、幸せな状態である。」ということです。社長であるかサラリーマンであるかという社会上の立場は無関係といってもいい。ただし自分の立場を意識し、プロとして職責を全うしようとする倫理観を大切にすることは、人格向上に大いに貢献します。よってどのような立場であっても、仕事をとおして常に人格を磨く機会は与えられているということです。

手段はさまざまでも、ゴールは同じ

この観点を得てからというもの、私にとって人生のゴールはお金持ちになることではなく、常に自分の人格を高めようと努力し続けることになりました。ですので冒頭の質問である「やりたいことと、できることのどちらを優先すべきか」については、「手段はさまざまでも、目指す山の頂は同じ。どういうルートを辿っても(人格を高めるという)頂上を目指すという意識が大切。」という回答になります。ただ、もし回り道というものがあるとすれば、それは自分の人格を損なう行為に加担したとき、でしょう。そのようなときはいったん下がって、再び頂上に向かって登るしかありません。人によって登るペースはまちまちですが、それはいいのです。

社長業のメリットを再考する

私が社長という役割を担おうと考えたときは、上のような思想を持っていませんでした。ただがむしゃらに働いて、会社の業績を上げたい、社員に報いたい、そしてよくやったと評価されたい、という気持ちの方が強かったです。しかしこの12年、業績も決して順風満帆ではなく、外的環境の変化には翻弄され、辛い決断を重ねてきたことが、私の思想を変えました。もし創業してすぐヒット商品に恵まれ、挫折を経験しなければ、このような話はしなかっただろうと思います。つまり、私にとっての社長業のメリットは、厳しい環境に身を置くことで自分を追い込むことができた、ということに他なりません。おそらくサラリーマンであれば上層部のせいにできたことが、社長になると他人のせいにすることも、言い訳もできません。そうしてはじめて見えたものがある、というのがこの12年間を通した実感です。

だからこそ起業を薦めます

「多くの壁にぶつかり、穴に落ち、やらなくてもいい経験も重ねて今に至った私ですが、不幸そうに見えますか?」と問うたとき、ほとんどの学生が「そういう割には(この人は)楽しそう。」という印象を持ったようです。起業することによって、短期間で自分自身の全能力を試され、裸になった状態の自分を見つめ直す機会が得られます。そういう経験ができるとわかった今だからこそ、私はそれぞれの人生の中で、起業という選択肢を常に持ち続けてもいいと思っています。実際に起業しなくてもいいのです。もし起業したらどうなるだろう、こういう状況で自分はどう行動するだろうと思考するだけでも、よいトレーニングになります。"もし自分が社長だったら..." という視点をもつことで気付くこともあります。そこに合点するか、反面教師とするか。いずれもプラスになることと思います。

さまざまな経験を活かす目的は、すべて自分の人格を磨くことに通じています。学生の皆さんがこれから社会で、よい体験に遭遇することを心から願っています。

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