ジャスミンソフトは13年目に入りました

ジャスミンソフトは平成13年(2001年)3月14日の創業で、先週に13年目に入りました。順風満帆な道のりにはほど遠く、現スタッフならびに去っていったスタッフに大変な苦労をかけてばかりです。いつの日か、スタッフに恩返ししたいという気持ちでいっぱいですが、さりとて、どうしても私の目線からは「現状はあれもできていない、これも足りない。」ということに気がいってしまい、目の前の課題解決に日々、翻弄されています。

このブログは飛行機の移動中に書いています。そこで日常から離れて、足りないものではなく、過去の12年間で得たものを振り返ってみたいと思います。

製品を開発する、という目的を共有できるチームがある

これが一番の財産です。そして、このレベルのチームを育成するためには、これだけの時間がかかりました。創業時は受託開発中心で、お客様の仕様を満たすことがゴールでした。極端に言えば納品後に使われないようなシステムであっても、つくりあげたという自己満足があったわけです。しかし自社製品開発に舵を切ったあとは、使われなければ意味がないという意識改革を中心に、品質面やサポート面で、スタッフ一人一人のスキルアップが求められました。まだまだ課題はありますが、創業時に比べると本当に頼もしくなりました。それでも全国レベル、そして世界レベル視点では私たちはまだルーキーといったレベルでしょう。より高い山を目指す、というモチベーションを持った少数精鋭のスタッフによるチームづくりは発展途上ですが、今のスタッフと一緒にやっていくことができれば大丈夫、という安心感があります。

何かを得るためには、何かを捨てなければならない

製品開発指向で成功する企業は一握りです。そのため多くの企業では、安定運用している部門(受託や保守など)をメインとし、一部のお金をつかって新製品の開発に投資します。しかしベンチャー企業として創業したジャスミンソフトは安定売上部門がそもそも存在しません。最初は受託開発部隊と製品開発部隊を併存させようと考えましたが、どうしても共通の意識をもって進めるという会社運営ができませんでした。悩んだあげく、一つに集中するという選択をするのですが、この過程で自分にとって何が大切かを常に問われることになりました。"捨てる" ことはその時は辛いのですが、そうしないと先がない、という将来を見据えての判断を行うことは身をもって決断の重さを知ることになりました。

地元・沖縄の企業に採用されるための営業戦略の転換

私は最初、地元で成功して東京に進出というストーリーを描いていました。今は違います。地元の会社だから競合他社よりも有利になる、ということはまったく甘い考え方です。むしろ「地元だから採用してください。」などと懇願すること自体、営業面では不利に働きます。

逆説的ですが、地元(特に地方)で成功するには、率先して自社を全国ブランドに育て上げることです。大都市圏に多くある、本社企業での採用実績こそが結果的に地元でのイメージアップとなり、採用につながります。もちろん、そのためには相応の技術力が求められることはいうまでもありません。そこまでの覚悟がないと製品開発型企業として成功することはできない、と腹を括るまでには、葛藤がありました。

自分でやってみることではじめて腑に落ちる

これも重要な経験でした。現代社会にはたくさんの代行業者や、コンサルタントが存在します。しかし私が本当に悩んだ次の事柄は、結局のところ自らで試行錯誤しないと納得できないものでした。

  • 人事評価制度
  • 製品価格の決定
  • マーケティング
  • 資本政策

これらのことはすべてが「自社の方針」という骨太な幹があってはじめて決めることができます。しかし悩んでいる時は方針そのものが揺らぐような状況であり、多くの人から意見を聞き、真似をし、混乱しては落ち込むという繰り返しでした。それでも人のせいにはできない、自分の責で判断しなければならない、という自覚はあったので、何度もやり直しました。その過程で私と関った人には多大なご迷惑をおかけしましたが… このような経験をとおして、ようやく他の方のアドバイスを自分のフィルタをとおして理解することができるようになりました。(そのフィルタを持っていないときは、あれこれと飛びついていました。)私にとってこのフィルタをつくるには、混乱という経験がどうしても必要だったのです。

時間はかかっても、王道を進みたい

ジャスミンソフトは外部からみると歩みの遅い会社でしょう。Wagbyを発表した当時、多くの方から「これは成功するね!がんばれ!」と応援していただきました。にもかかわらず、発表から何年もやっている割にはまだメジャーになりきれていない、とお叱りを頂戴することもしばしばです。もちろん、私自身の経験そして目線が全国で成功しているベンチャー企業のレベルに達していなかったことが主な原因です。多くの回り道をしてきましたが、結果的には、その経験に無駄なものは一つもなかったと感じています。今の心境は単純ですが、お客様が求めることをひたすら実践するという「王道」を踏み外さない経営を続けたいと思っています。

創業日は、ただの通過点。

ジャスミンソフトは創業記念日がありません。過去には社内でケーキをいただいたことはありましたが、基本的には「振り返りのきっかけ」的なことにとどめており、通過点であるという位置づけです。私の中での記念日は、製品出荷やユーザー会など、外部との接点にあります。今年の大きな記念日は、7月に開催予定の Wagby R7 発表会です。もてる全エネルギーをここに集中するために頭脳がフル回転しています。来年、再び創業日という通過点をくぐることができたとき、会社、そして自らがどれだけ成長しているかをまた振り返りたいと思います。