メモ:【争点別】システム開発をめぐる紛争インデックス

知人からの紹介を辿って、参考になるページを見つけました。弁護士の伊藤雅浩氏のブログです。
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20291231/1336030928

この中で一つ、注目したタイトルを紹介します。

「システム仕様の提示・説明責任はユーザ側にある(東京地判平22.7.22)」
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20120502/1335971526

詳細は上記エントリを読んでいただくとして、裁判所のコメントに次のような記載がありました。

ソフトウェアの開発は,注文者側と請負人側との間で開発すべきソフトウェアの性能,仕様,形態等に関する具体的なイメージを共有するため,注文者側の技術担当者と請負人側の技術担当者との間に密接な協力関係があることが必要不可欠であるところ...

しかし私のこれまでの開発経験では、この点を自覚されていらっしゃる注文者というのは案外、少ないです。それが「ざっくりとした仕様を伝えたら、あとは(そちらは)プロなのだから、間違いのないシステムを一発で持ってきてくれるだろう」ということになり、丸投げ委託開発の温床になります。

私がかねてより「(システム開発は)ユーザー主導型がベストスタイル」と主張しているのも、その根底には「注文者側が積極的に関わること」という願いが込められているのです。

もう一つ、このエントリには次のような記載もありました。

途中で,「最後まで誠意をもって開発を行います。」と書いた念書を差し入れたからといって,いかなる要望をも取り込むことを約したわけではないとした。

これもあちこちで聞く話です。注文側にとってはリスク回避を意図した行為なのでしょうが、本当のリスク回避はこうやって開発者を脅すことではない...ここまで書いて、以前にプロジェクトのリスクについての考え方を整理したブログを書いたことを思い出しました。

「IT業界のプロジェクトは、いつから誤解されるようになったのか」
http://yoshinorinie.hatenablog.com/entry/2012/12/17/150343

今年に入ってシステム開発案件が増加しつつあるという嬉しいニュースを同業者様から聞く機会が多くなりました。それは喜ばしいのですが、新規システム開発には上のような問題も常に抱えています。せっかく新しいシステム開発プロジェクトがスタートするわけですから、これまでと違うアプローチで、より成功率を高めようというトライがあってもいいはずです。微力ながら、業界の一員として、このような主旨の発信を継続していきたいと思います。