2015年8月時点の現場より:エンタープライズアプリケーションの開発は、まさに変化の真っ最中にあります

超高速開発コミュニティの発足は2013年8月でした。それから2年、エンタープライズアプリケーションの開発に携わっている方々の意識が変わりつつあるという話です。最近読んだ記事を中心に、最新動向としてまとめます。

「システム内製」を真剣に検討する土壌

つい先週(2015年8月21日)の、谷島様の記事です。

「ITの仕事はIT企業に任せよ」は嘘
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/watcher/14/334361/081700347/?ST=management&P=1

長文で、一読してもわかりにくいところがあるかも知れませんが、ユーザー企業によるシステム内製化は決して理想論ではなく現実解になりつつある、という内容です。私が注目したのはこちら。

理想論を続けつつ反論に答えてみよう。企画と設計がしっかりできれば開発量を抑えられるし、設計情報を基にプログラムを自動生成するツールを使えば開発と保守の生産性を高められる。「今さら変えられない」というわけではない。

超高速開発の基盤である、プログラム自動生成について有力な選択肢と捉えています。設計情報とは、エンドユーザ自身がアプリケーションの仕様を見える化できることにつながります。プログラム自動生成は、開発のピークという問題をなくします。例えば Wagby では、それこそ一人の開発者が100を超えるモデルの設計情報を書くこともあります。仮に外注したとすると、数千万はかかるであろうシステムを一人でコントロールしているわけです。

さらに設計情報の作成にあたっても、記事中で次のように説明しています。

業務の全容を把握して改善点を見つけ出すデータモデリングはその一つであるし、要件定義に関しては様々な工夫が凝らされている。新規事業でシステム要件が曖昧なら、事業の担当者と開発者が向き合ってプロトタイプを何度か作りつつ開発を進める手がある。いわゆるアジャイル開発は開発者が社内にいることを想定している。

経験として、社内に最低1名の「データモデラー」がいれば、超高速開発ツールを使って自社システムの内製を進めることは可能です。誰もがデータモデラーになれるわけではないし、自社で育成することは無理だ、と突っ込まれるかもしれませんので、もう一つの記事を紹介します。

ポストSIビジネスとしての「ビジネス同期化戦略」

私がよく参考にさせていただいている、ネットコマース斎藤様の記事です。

「ポストSIビジネス:4つの戦略と9つのシナリオ(1)」
http://www.netcommerce.co.jp/blog/2015/08/15/7990

この記事にもあるような内製化支援は今、高いニーズがあると実感しています。実際、Wagbyの問い合わせでも、内製化支援は着実に増えています。にもかかわらず多くのSIerならびにITコーディネータの方は、このビジネスに踏み込めていません。その原因は二つあると考えています。一つには、自らが得意とする超高速開発ツールを定めていないこと。そしてもう一つは、新しい価格体系をつくりきれていないこと、です。

特にITコーディネータという形で中小企業に関わりながら、ExcelやAccessでVBAを駆使したアプリケーション開発を行っている方が多いことを憂慮しています。「つくらない開発」という視点に踏み込んでいません。ExcelやAccessで作り込むほどに、スピード感はなくなり、保守性が低下し、最後は誰も修正できなくなるというケースをそれこそ何度もみてきました。これを変えたい、というのが、私たちが Wagby を開発している大きな動機付けです。

しかし気づいている人には、新しい世界がみえています。

顧問エンジニアというロールのあり方

先日、ござ先輩とお話しさせていただく機会がありました。そのあとでこのブログを読んで、もうビジネスモデルが固まっていると改めて感じました。

「顧問エンジニアというロールのあり方」
http://aroundthedistance.hatenadiary.jp/entry/2015/08/17/130736

で、なんと、受託開発よりもSaaSよりも、業務システムを自動生成するのが安い時代に入っちゃってるのよね...これがまた。KintoneやWagbyの価格、月額で1.5万前後。これらを使いこなすことで、その会社の為のITシステムを作ることが出来て、一番安くて速い上にミニマムな修正がユーザー出来るなら、僕らサプライサイドの人間が自信を持って薦められる。

そしてもう一つ、Wagbyとkintoneについて書かれたブログをご紹介します。ITコーディネータ井上様の記事です。

「Wagbyで感じたPaaSとは違うもう一つの内製化ツール」
http://artisanedge.jp/blog/2015/08/12/074343.html

そこで切り札を握っているのが、ノンコーディングツールの出来です。考えているのは中小企業の業務効率化と競争力向上のためのITなので、内製化といってもエンジニアを雇ったりするのは難しいという前提があります。だから、どのような業務プロセスをつくり、そのためにどういうシステムが必要になるかは考えるとしても(それは経営活動そのものですから、省略するわけにはいきません)、それをITに落とし込むところは、極力省力化したいのです。

いずれも、SIまたはコンサルティングというお立場からみて、自動生成ツールを使ってお客様に何を提供するか、という視点が含まれています。

私は常々、日本の社会は変わるまではゆっくりだが、変わるときは一気に変わる、と感じてきました。幸いにもその最前線に身を置いているため、その予兆がさまざまな形で入ってきています。この流れはますます加速することでしょう。

この週末に「ビジネスシステムイニシアティブ2015」が開催されますが、間もなく満席と聞いています。参加は無料なので、特にユーザー企業の情報システム担当者ならびに経営者にご参加いただきたいと思います。この会は、ユーザー主体のシステム開発のあり方を問うもので、事例を伺うたびに元気をもらっています。今回もまた、熱いイベントになると期待しています。
http://www.seminar-reg.jp/bsia/2015/index.html