吉本興業の体験は特殊ではなく、多くの日本企業が抱える悩みだと認識しておきたい

BUSINESS INSIDER JAPAN に掲載されていた記事に刺激されました。

www.businessinsider.jp

文中にある、大﨑社長のこの発言:

僕が考える適正配分とは、支払われるべきところに、きちんとお金が落ちること。

日本は制作会社が下請けと位置付けられているから、制作会社が育たない。制作会社を育てていれば、もっと日本のテレビ業界も変わったんじゃないですか。それはアニメもしかり。いままでは出口がテレビしかなかったのが原因だと思います。お笑いも僕もテレビと一緒に育ってきました。僕は、テレビは大好きだし、テレビしか知らない。でも、功罪相半ばと言うところだと思います。

いいか悪いかは別として、出口を押さえて、中抜きを飛ばして、製造販売直販だっていう世の中になっていく中で、映像カルチャーもそうならざるを得ないのは当然の流れでしょう。

は、どの業界に携わる人も、漠然と感じていることではないでしょうか。もちろん私がいるエンタープライズシステムに関わる業界も同様です。

そして、実力はあるものの、大手から「下請け」と扱われ、悔しい思いをしてきたところは、

制作の自由度が高いこと、適正配分がなされること、マーケットの規模が大きいこと、インフラの費用がかからないこと。これらが大きいと思う。

に魅力を感じるというのも、また同じです。

インタビュー記事からわかることは、大手企業が優良顧客を囲い込み、現場をつくる企業が下請け扱いとなったビジネスモデルは、大手企業にとって最大の寡占状態であるがゆえに、実力のある下請け企業ほど、常に離反のタイミングを伺うという構図です。そして結局は、そのような構図は業界全体の成長を抑え、人が育たず、外部環境の変化 - 黒船の襲来や、技術革新 - に弱い、という結末を迎えます。

これは強みが弱みに変わったわけではありません。一見、強みのように見えたものの正体が、実はどこかに無理を押し付けるビジネスモデルであれば、この仕組みは長続きしない、ということです。押し付けられた負の部分は、澱のようにたまっていき、全体を弱くする。なので、こういうビジネスモデルはやらない方がいいということを社会全体で共有しなければ、いつまでも日本企業は世界で伸びないという悪循環から脱せられません。

この問題はエンタープライズシステム開発でも同じ構図があります。システム開発のリスクを誰に負わせるかということを優先するあまり、ユーザ企業と開発者との距離が遠のき、あまつさえ開発者に適正な配分がなされないという状況が続いたため、業界全体が疲弊したことは皆が少しずつ感じているのではないでしょうか。これを仕方ないこと、と諦めることが結局は私たちの業界そのものを弱くしているのだから、ここは少なくとも「今の状態はよくない」という認識だけでも共有しておいた方がいいのではないか、と感じた次第です。

ところで認識の共有には、的確な名前をつけるのが重要です。誰かこの現象に名前をつけてもらえないかな、と。「○○の罠」みたいなものを考えてみたのですが、いい案が浮かびませんでした...。(もしくは私の知らないところで、すでにあるのかも知れません。)