アットホームなエンタープライズ開発の世界(WDD2017後の所感)

さった11月28日、過去最大規模となる Wagby Developer Day 2017 (東京・御茶ノ水ソラシティ)が無事に終わりました。
事前申込者数は 360 名となり、当日も300名を超える方々にご参加いただくことができました。この場を借りて、ご来場いただいた皆様、そしてご支援いただいたWagbyパートナーの皆様に御礼を申し上げます。

今回のイベントの「隠し球」は、実物大の “Wagbee” のお披露目でした。職業は SE で、なべつかみのような手でキーボードを巧みに操作し、常人の10倍のスピードでシステム開発ができる特技をもつという裏設定があったのですが、そのようなことはすべて消し飛び、ひたすら参加者から「Wagbeeちゃん! 可愛い!」と大人気でした。一応、性別は男だったのですが、それも「ちゃん」付けで落ち着いたので、すでに性別のような些細なことはどうでもよいのだ、という心境に達しています。

当日もし、Wagbee でドン引きされたら、そのショックでキーノートセッションも落ち込むかも知れないという賭けでしたが、私の想定以上に多くの人が楽しんで「Wagbeeとのツーショット」を撮っていただけたので、安堵しました。実際、女性受けがよかったです。私も実物が歩くのをみると、おお可愛いキャラクターではないか、と感心した次第です。ようやく自社製品のオリジナルキャラクターをつくる、という積年の野望を実現できました。

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キーノートセッションで発表させていただいた内容や、ユーザー事例など、報告したいことはたくさんあるのですが、それは次回にします。イベント終了から1日たって、ふと「アットホーム」という言葉が浮かんだので、先にそのことを書きます。

アットホームなエンタープライズ開発の世界

大規模エンタープライズ開発というと、「お客様の顔が見えない中、上から降りてきた仕様書を読み解き、巨大なシステムの一部を作成する」というイメージがどうしても先行してしまいます。しかし私たちは、これとは異なる方法で大規模開発に取り組もうとしています。ご参加いただいた方は、多くの事例発表や廊下での立ち話、そして懇親会でのさまざまな会話をとおして「Wagbyを仲介して、お客様(発注者)と開発者(SIerと製品メーカーである私たち)との距離がとても近い」ことに気づかれたと思います。まるでひとつのコタツに入って、みかんを食べながら、あーだこーだと議論しても違和感がないほどで、一言でいえば「アットホーム」な雰囲気です。

こんなに距離が近いのは小規模システムならいざ知らず、大規模にはそぐわないと笑われそうですが、この距離感を保ったまま、大規模開発に適用したいというのが私たちの目線です。多重下請けピラミッド構造だと、どうしてもコミュニケーションのコストが高くついてしまいます。いわゆる伝言ゲーム状態に陥りやすい。しかし距離が縮まれば問題を解消できます。私たちが提案する Wagby はツールでもありますが、この視点からみると具体的なソリューションにもなっています。Wagby をお客様と開発者にとっての、ほどよい「共通言語」とし、その上で両者特有の事情(ユーザ要件と、実装のための難易度)をそれぞれの立場で相手に伝えることができるようにします。この「ほどよい」というのは感覚的な説明ですが、両者の立場を加味した、絶妙なさじ加減が必要です。このバランス感覚こそが、Wagbyのもっともコアな部分といえます。

"Wagby, マイクロサービスに舵をきるってよ"

オリジナルキャラクター Wagbee のデビューが隠し球とすれば、勝負球は「マイクロサービスへの傾倒」です。現段階で、これをエンタープライズ分野にもってくるのは時期尚早と思われるかも知れません。しかしジャスミンソフトの優位性は、他社がやらない分野へ一歩踏み出す、いわゆるベンチャースピリットを発揮できることです。もちろん勝算あっての冒険であり、私はマイクロサービスのアーキテクチャはエンタープライズと相性がいい、と考えています。などと偉そうに言うのではなく、正直に「Spring framework の方向性に乗る」と言い直します。なお Spring framework 自体は SoR/SoE を問わず適用できるものですが、Wagby はあくまでも SoR、エンタープライズの領域に絞った適用が中心です。とはいえ同じ基盤 (Spring) なので、SoE との相性も高まるでしょう。実装チームはいろいろと苦労していますが、出来上がりが楽しみです。

“Wagby, 自動生成の拡張をサードパーティに解放するってよ”

そしてもう一つの勝負球がこれです。キーノートセッションでも会場に、「自動生成エンジンの拡張をやってみたい方、どのくらいいらっしゃいますか?」と尋ねたら、すぐに数十名の方が挙手されました。これは受けると確信しています。Wagby 自体は OSS ではありませんが、多くの方を巻き込んで Wagby のエコシステムを実現します。そしてこの方々と一緒になって、日本から海外へ、という目標に進むことができればと願っています。

まとめ

私にとってビジネスの醍醐味は、大風呂敷をひろげて、賛同者を増やすことです。売上はそのあとからついてきます。事業計画の売上目標は一応ありますが、数字の達成は結果であり、重要なのは Wagby エコシステムの実現にあります。幸いなことに、現行の株主陣は「赤字にならなければ、好きにやっていい」というポリシーなので、とても助かっています。引き続き、攻めの姿勢で臨みます。

なお当日の発表資料はここからダウンロードできます。参加できなかった方も、どうぞ。
wagby.com