メインストリームが時代遅れになり、エッジが台頭する話はやっぱり面白い

ニジノ絵本屋さんの奮戦記?を読みました。読書中、20年前の自分のことを思い出すことが何度もありました。

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特に絵本が好き、というわけでもなかった店主が、ふとした思いつきで始めた絵本屋さんの実話です。まったくの門外漢ゆえに、勢いで突っ走るところはベンチャーあるあるなんですが、一方で細かい配慮もされています。資金ショートにならないよう、かといって業界のメインストリームに乗らずに自主性を保つことを忘れず、他がやらないことでも自分にとってやるべきと思ったことは目先の利益に直結しなくてもタネをまくという活動に共感しました。こういうのは大切だよなぁ、最初の勢いってあるよなぁ、気がついたら応援してくれる人が増えるんだよなぁ、しかし行間から読み取れる気苦労は半端ないだろうなぁ、など、うなづくことしきりです。いわゆる立志伝中の話ではなく、身の丈にあった話ですので、ベンチャー企業を立ち上げてみたいけど、思いだけが先行して何をしたらいいかわからない、という方は参考になると思います。

もちろん、国内にも同様の奮戦をされている、多くの方がいらっしゃるはずです。自分自身の体験も含めて改めて思うことは、「現時点」の業界の常識、すなわち売り上げを支えるメインストリームは必ず時代遅れとなり、そして「現時点」で海のものとも山のものともわからない、つまり判断が難しいテーマを掲げて試行錯誤する周縁部、つまりエッジの領域から何かが生まれるという図式です。社会人になった最初の数年はメインストリームを体験してもいいでしょう。しかし、そこで違和感を覚えたら、迷わずエッジの領域に自分自身を投げ込み、10-20年かけて立ち位置を確保しようともがくことが、結果として変化の激しい時代で生き残ることになる、ということです。(ベンチャー企業を興すことが目的ではないので、例えば組織の中でもエッジに位置する部署で奮闘するという選択もあります。)

ただ、生き残るためにそうする、ではなく、なんらかの違和感を大切にし、その違和感を解消することに自分のエネルギーを注ぐという「ぶれのなさ」が結果的に評価されるはず、というのが私の意見です。そういう経験を経てきた人が発する言葉って、なにか説得力があるんです。定量化も定式化もできていないんですが、すっと自分の中に入っていくというか。もし自分が経営者ではなくサラリーマンという道を継続したならば、おそらく社内政治に強い人ではなく、そういう感覚をもった人の部下でありたい、と思ったことでしょう。

では私にとっての違和感の原体験は何か、と問われれば、即答できます。システムを開発するという業務分野で、大規模アプリケーション開発を人海戦術で行う体制は無理があるという視点です。その無理の具体的な形が、多重下請け構造や人月制度、ウォーターフォール型開発といった現象として語られていますが、これらを個別撃破すれば問題が解決するということではない、ということに気づきました。本質的には、複雑なシステムならではの「複雑さ」をどう管理するかであり、現状は「人ががんばって管理する」ことが指針となっています。ここに IT を積極的に導入することで、ケアレスミスを含む多くの問題を取り除くことができれば、少人数で大規模アプリケーション開発を行うことができるようになるはず、です。

残念ながらこの業界では、ここにメスを入れることは自社の売上減少や雇用問題と絡めて議論されてしまうので、提供側(ベンダー)からの抜本的な改革は難しい。メインストリームとしてみた場合、現行制度の維持こそが売上最大化に直結します。しかしそこで働いている人は日々、SAN値が削られてしまうリスクと隣り合わせです。そこをなんとかしようとすると必然的に自分の立ち位置はエッジ側にシフトせざるをえません。が、それでもかまわない、自分が会社を興したのは売上とか上場とかが目的ではなく(注:結果としての数字は欲しいです。そこは否定しません。)、違和感をなくすという活動に人生を捧げることに意味があると納得したから、だったはず。

そう思い続けて、まもなく20年になろうとしています。そういう活動が評価されたと思うのは、こういう機会をいただけたとき。きたる10月18日(金)東京のJPタワーで開催される「TSHイノベーションフォーラム2019」で、大手企業の方々と並んで社員数10名に満たない当社が、基幹系というテーマで1コマ、語ることになりました。

TSHイノベーションフォーラム 2019 - 東京システムハウス株式会社

もちろん私たちは大規模なアプリケーションの開発案件を受注し、納品するという形ではお役に立てません。しかし少人数で大規模アプリケーションを開発するための仕組みや、今後10年20年というスパンでみたときの基幹系のあり方を日々、思考しています。その内容を言語化して伝えるということで、イベントに参加された方に、なんらかの貢献ができればと願っています。