SoR/SoEという区分から、ノーマル/ニューノーマルへ

私が最初に SoR/SoE という区分を知ったのは2015年でした。今では業界関係者にはほぼ周知の概念になりましたが、要約すると次のようになります。

SoR (System of Records) SoE (System of Engagement)
対象 自社業務の効率化 外部との接点
目的 コストの削減 売上の向上

しかし2020年、世界に衝撃を与えたコロナ禍により、"ニューノーマル" という概念が一気に普及しました。どの産業も、構造的な変化を避けることができないならば、積極的に受け入れようという意思を感じます。「我が社にとってニューノーマルな形とは、どういうものか?」を考えることはまさに経営者の喫緊の仕事であり、その解を見つけられないのであれば廃業に至るという厳しさと背中合わせです。"DX(デジタルトランスフォーメーション)" も重要な方針でしたが、今思えば、こちらはまだ成功するところは一部の先進企業という雰囲気がありました。しかしニューノーマルは世界の構造変化が一気に起こりうることを実感させられたことによって、否が応でも「我が社の問題」となっています。

この状況で、私も考え方を変えようとしています。SoR/SoE という区分ではなく、before DX/after DX という視点でもなく、まさに "ノーマル/ニューノーマル" という変化をどう捉えるか、です。現時点の私の整理は次のようなものです。

ノーマル ニューノーマル
対象 業務全般 業務全般
目的 現在の業務を前提としたコスト削減と売上の向上 新しい業務設計と自社の優位性、差別化の明確化

つまり "ノーマル" は、これまでの SoR/SoE という区分もごっちゃ混ぜにした上で、前提となる社会環境(お客様)があり、かつ、それまで蓄積されてきた業務ノウハウがあって、これをいかに IT を使って再構築するか、という立ち位置でした。

しかし "ニューノーマル" は、リモートワーク、働き方改革、お客様のニーズ、お客様との接点といった、前提となる社会環境が大きく変わる中で、組織そのものを見直し、新しい業務設計に着手することが不可欠となります。

一言で表現するならば、これまではコア(核)は維持しながら環境にあわせて形状を変えるものでしたが、現在はコア部分の再設計が求められているということです。

ニューノーマルをとりまく変数は膨大です。IT に関わる視点をからめたサブテーマだけでも「オンライン化」「AR/VRの活用」「スタッフを管理する、から、共同作業する、へ」「オフィスそのものの見直し(リモートオフィス)」「ゼロトラストネットワーク」など、検討事項が多くあります。これから若手を採用するにあたっては、リモートワークが認められることが前提となっていく可能性も出てきました。

もちろん今後、コロナ禍問題が一気に収束し、元の社会に戻るという可能性もあります。このブログを書いている時点では不確定要素も多いですが、私は "ニューノーマル" は一過性ではなく、これからのトレンドになるという前提で社業を考えようとしています。そうすると Wagby の位置付けも変わります。これまでは「主に SoR を対象とした、少人数で大規模システムを開発できるローコード開発ツール」というアプローチでした。しかしこれから求められるのはニューノーマルに迅速に対応する基幹システムであり、SoR/SoE といった区分は不要になります。もともと私は2020年代はSoRとSoEは融合するという考えでしたが、予想より早く、そのような開発ツールが求められるようになった、ということです。

この11月に、新しい Wagby のロードマップを発表します。ニューノーマルという視点をベースに、基幹システムの再構築の考え方や、ローコード開発ツールの進化の方向性、AI や RPA といった他分野との連携について、それまでに私なりに整理してお伝えしたいと思います。