Wagby Developer Days 2022 in 幕張メッセ

今回の Wagby Developer Days 2022 は、3年ぶりとなる会場での開催となりました。しかも Japan IT Week (幕張メッセ)内にブースを構えての実施は、初チャレンジです。コロナ禍も収束したわけではありませんが下火になっていますので、感染対策に気をつかいながらも、多くの方とコミュニケーションできることを楽しみにしています。

WDD2022会場ブース

私は三日間連続で、午前中にセッションをもたせてもらっています。みんな大好き DX ネタで、私なりの考え方を披露しました。聴講した方から良い反応をいただけましたので、このブログでも要点だけ紹介します。

ベースとしたのは IPA が公開している「DX実践手引書 ITシステム構築編(暫定第2.0版)」です。誰でも無料で読むことができます。
www.ipa.go.jp

はじめに本書にある

の定義を参考にします。DXの成熟度レベル指標に従ったヒアリング調査では、2020年度時点でレベル3以上に踏み込んだ企業はアンケート総数の8.5%とのこと。個人的にはDXは本当に難しいテーマだと思っているので、レベル3以上を8.5%もやっているという結果は優秀な数字です。

そしてDXには進化の方向性があると整理したのがこちら。

これだけではわかりにくいかもしれませんので、この図と見比べるとよいでしょう。

市場を変えた、社会を変えた、というゴールを目指しましょう、ということを打ち出すのは意味があります。どう変えるか、というのは個々の企業が策定する「ビジョン」によります。ビジョンが大事、ということもわかります。

ところで、この報告書ではDXというテーマでの開発を「デジタルトランスフォーメーション」枠の「ビジネスモデルのデジタル化」「デジタルサービス」「顧客とのE2Eでのデジタル化」に絞っているだろうと受け止めています。この開発という視点で、報告書では次のような説明文がありました。

  • “挑戦する際には、ソフトウェアを開発することも多いが、その際に重要なのは、次に生かすものは必ずしも作った成果物(システム)ではないことである。ソフトウェアを技術的負債化しないためにも、上記サイクルで得られた知見だけを活かして、作ったものを捨てる覚悟も時には必要である。”
  • “内製化とは自社でプロダクトをコントロールすること。それが出来れば外部エンジニアを活用しても問題ない。”
  • “現場の要求変更をその場で対応して見せることで、スピード感を実感してもらえる。”

これらの実現は、アジャイルと内製が相性がよい、と説明されています。これもそのとおりと思います。

ここまでを前提に、私が(そして多くの読者が)感じる疑問は、次のことではないでしょうか。

デジタイゼージョンやデジタライゼーションの分野でさえも問題山積みだが、一足飛びにデジタルトランスフォーメーションに着手できるのか。

その答えはもちろん、各企業の個別判断、となります。ここが悩ましいところです。

例えばある企業のシステムの実態が次のようなものだったとします。

その企業の「競争領域」を支えるであろう中間部分は、レガシーシステム、パッケージソフトウェア、クラウドサービスがごちゃまぜになっていてます。不足分を Excel で埋めつつ、RPAやファイル交換でなんとかデータ連携をおこなっているというケースは多いでしょう。これをそのままにして上位のテーマに挑戦するのか、ここもなんとかしつつ両論でいくのか、などの進め方は個々の企業の考え方次第で正解はありません。

ただ、Wagbyとしてはこの中間部分を放置せず、このタイミングでWagbyで「統合データベース」として組み上げる、ということを提案しています。


現場がノーコード、ローコードでシステムをつくる、ではない

DXの文脈としては、ここで「現場がノーコード、ローコードでシステムをつくる」となるのかもしれませんが、私はその考え方とは距離を置いています。

現場がそれぞれアプリをつくる問題は、またもや重複データが生じることです。それを避けようというのが統合データベースです。

Wagbyのアプローチは次のようになります。

  • 内製開発の要として「データモデリングチーム」を立ち上げる。
  • アプリケーション開発はどういうものかを知ることは大切だが、全員が開発ツールを使う必要はない。
  • 開発ツールの使い方より、業務デザイン方法を学ぶ方がいい。
  • 業務デザインを起点に、データモデリングチームがモデリングを行う。
  • データモデリングからアプリケーションが導かれる。

業務デザイン力(りょく)とは、こうあればいい、という業務の流れをデザイン(設計)することです。

勘違いされるかもしれないので強調しますと、それは操作画面のデザインのことではありません。操作画面を起点にすると、現行業務の操作性改善という枠組みから抜け出せません。

自分の仕事の「入力」と、誰に渡すかという「出力」を組み合わせることで、組織( = チーム)を意識します。この業務デザインをとおして、データが見出せます。これがデータモデリングチームへの材料となります。Wagbyでアプリケーションを作るのは、少数のモデリングチームです。

このアイデアは、WDD2022の羽生さんの講演「地に足のついたDXを実現するためのメッセージ指向の業務デザイン」とリンクしています。

まとめ 私が考えるDX人材

DX人材の育成もホットなテーマですが、私が考える人材は次のとおりです。

  • 組織全体、部門、個人を俯瞰できる業務デザイン力を備えること。
  • 組織のビジョンから、未来の業務デザインを想像できること。
  • 数年先のITがもたらす世界観を意識し続けること。
  • カイゼンとDXの質的な違いを理解できること。
  • データモデリング力を備えた人材が「核」になる。

ということで、プログラミング能力や、ノーコード・ローコード開発ツールを使えることは必須ではありません。どういうものかを知っていて、開発のイメージを共有できる程度で申し分ありません。

大切なのは業務デザイン力(りょく)です。一人一人が未来の業務デザインに携わることに意味があり、これが企業のDXの原動力につながると考えています。