景気回復後の業界を考える

忘年会シーズンということで、同業他社様との意見交換をする機会も多くなりました。しかし明るい材料に乏しく、どの会社もサバイバルモードです。今の状況を乗り切るために受託要員を派遣に切り替えるなどの手を打っていらっしゃるところもありますが、これもいつまで続ければよいのか、悩ましいところです。

ところで社長の立場からは現状を乗り切るのと同時に、景気回復後の世界を予想した種まきをしないといけません。私の分析は次のとおりです。

  • オフショア化の流れは止まらない。よって案件が増えたとしても下落した人月単価は上昇しにくい。
  • コスト、品質、納期へのプレッシャーはますます強まっていく。グローバル競争で闘う企業にとって、手綱を緩めることは決してできない。
  • 大企業の業績回復の恩恵を受ける国内の中小企業は一部でしかない。系列・下請け・代理店の峻別が進んでおり、二極化が進む。よって中小企業の業務系 IT 投資は広がらない。一方で「それでも IT 化したい」企業からは SIer の限界を超えた低コスト化が要求される。

つまり、景気が回復すれば再び技術者の受託・派遣に勢いがつき、人材管理ビジネスで儲かる...という目算は難しいということです。

このような流れにあって、一つの解は新市場を目指すことです。現時点では「クラウド対応」と「スマートフォンiPhone, Android)対応」が熱いですが、プレーヤーが一気に参入するため飽和状態になっています。クラウドは基盤技術の構築に時間がかかります。国内勢の多くは Amazon のような仮想 PC 提供を始めるでしょうから、こちらは早晩、価格下落になります。他社が真似できないサービスを提供するのは Google と Microsoft ですが、いずれのプラットフォームも来年すぐに成功するというよりは、10年くらいのスパンでみた方がいいので、目先のビジネス規模は小さいと思います。

iPhone はコンシューマ向けに成功していますが、1本あたりのアプリの単価が安いため、ヒット商品をつくる必要があります。ベンチャー企業に向いていますが、既存企業にとって起死回生の手にするのは、賭けの要素が強いでしょう。Android はコンシューマ向けの Android Market がまだ AppStore よりは認知度が低いため、時間がかかりそうです。日本では端末が揃い始める来年が一つの転機でしょうか。

「企業向けシステム開発」は、しばらく保守案件継続の風潮が続くでしょう。これは安定収益に貢献しますが、大きな利益にはなりません。一方で新規案件については、よりコストパフォーマンスを追求するための努力が SIer には求められます。そのような状況にあって、Wagby を使った SIer 様は、提案公募案件で他社様の半額以下の見積を出せるようになっています。他社様はオフショアを使って価格を下げてくるでしょうが、それよりもさらに半額になって、かつ利益も上がるというのは強みであり、これからの時代に Wagby の活躍分野はますます広がると期待しています。

これまでの人月の延長によるビジネスから、提案型営業へ。これは IT 業界の悲願ですが、実際に本気で取り組むところは多くありませんでした。しかしいよいよ、この逆境の時期を「これまでどおり、じっと耐え忍ぶ」のか、「会社のビジネスモデルを転換する機会」とみなすかどうか、が大きな経営判断になっています。古き良き派遣型・受託型のビジネスはもう戻ってこないという決意を胸に、自社の強みを再構築する最大のチャンスにできるかどうか、この決断は社長にしかできません。