プロパティデータバンク板谷社長のご講演で受けた衝撃

少し前の話になりますが、8 月の MIJS の会合で、プロパティデータバンク板谷社長によるご講演がありました。同社は、独自性のある優れた戦略を実行している日本の企業に送られる「ポーター賞」を受賞しており、そのビジネスモデルに定評があります。
http://www.propertydbk.com/

経営という観点から、私にできなかったことを着実に実行されたということで衝撃を受けました。以下、列挙します。

  • 2000年の時点で、パッケージ方式によるライセンス販売に見切りをつけ、ASP方式一本でビジネス展開をすると決められた。
  • 営業の観点からは、パッケージの方が売上は高い。もし両方式を併売していたら、カンニバリズム(共食い)となり、営業はパッケージ販売にシフトしただろう。あえてそうさせなかった。
  • あくまで「一つのバージョン」にこだわる。お客様毎に異なるバージョンを管理すれば、それだけ効率が悪い。
  • カスタマイズをしない。日本市場はカスタマイズ天国であり、お客様のご要望に応じて複数のカスタマイズ版ができるのは通例。しかし、それも行わない。
  • 自社のコア(ビジネスモデル)は不動産管理のノウハウであるという軸をもつ。システム開発は外注されている。しかも常に複数社による競争状態をつくり、定期的に開発業者を変えている。

最後の「開発は外注」という点、私にはできなかっただろうし、今でもできないと思います。技術者上がりの私は、どうしてもプログラマの雇用維持や待遇改善に目がいってしまいます。収益の源泉は技術者だという発想があります。しかし、この 10 年で「良いプログラムを書けるから高給取りになれる」という状況ではなくなりました。プログラムスキルをお金に変えるには、さらにアイデアが必要です。

今、SIer の存在意義が大きく問われています。板谷社長のメッセージは「クラウドに特化し、サービス企業になることが求められている。受託開発から脱却しなければ将来はない」というものです。当社も含め多くの SIer、技術者が今、悩んでいるのだと実感します。