MIJS セミナーで、パッケージ開発ベンダーの想いを共有する

本日、MIJS 主催の「パッケージ導入事例セミナー」に参加しました。
http://www.mijs.jp/section/event/20101013.html

MIJS は、国内のパッケージベンダが終結したコンソーシアムです。当社は準会員という位置づけです。現在は 50 を超える会社が集っています。
http://www.mijs.jp/about_mijs/

本日の会を一言で表現するなら、企業や製品の紹介を超えた、覚悟の共有とでもいうべきトークの連発で、大いに刺激的でした。私はよく技術者の会に顔を出しますが、そこで得られる興奮とは一味違う、組織の代表が語るパッケージへの想いを聞けるのは良い機会です。

いくつかメモをとりましたので、列挙します。

  • SIer へ。ユーザー企業に提案するなら、その会社の社長が語るキーワードを知ること。経営計画をみて、それに合致する提案をすると受け入れられやすい。ユーザー企業の担当者を洗脳しようという営業が見受けられるが、それは間違ったアプローチであると知ってほしい。
  • パッケージ vs スクラッチ開発における比較の視点。陳腐化、新しい環境への対応、性能の向上、属人化・属SIer化、未使用機能の活用、ユーザー情報交換。スクラッチ開発は最初はよいが、時間とともに陳腐化する。パッケージは最初は完全ではないように思われるが、時間とともにバージョンアップするため、満足度は高まっていく。
  • 海外ベンダによるパッケージであった話。「このバグをなおしたら、いくら売上が上がるのか」というレポートを書く必要があった。
  • 日本ではスクラッチ:パッケージ比率は 9:1 程度と言われている。欧米はトップの指示で現場が動くが、日本は現場力が強い。そうなるとパッケージでは間に合わないという実情がある。
  • 一方で会計システムやメールシステムはパッケージで良い。顧客管理や販売管理になると、パッケージといえどもカスタマイズ比率が高まる。
  • ユーザ企業で成功しているところに共通していることがある。担当者が明るく、前向き。どうやったら成功するのか、ではなく、成功させるためにどうするか、という思考になっている。また、組織で権限委譲ができている。現場担当者が事例紹介で語る姿をみて、権限委譲の度合いが読み取れる。
  • 自社製品の海外展開に際しては、その国に応じてマニュアルを変える(単なる翻訳ではない)というような配慮が必要。開発の段階から国際化しておく = ガラパゴス化しない、ように気をつける。
  • 昔は天才がつくったプログラムが受けた。しかし今は機能することが当たり前。したがってデザインや使い勝手が勝負所になる。
  • ある製品で、決まった操作をすると画面下のある箇所がピンク色になるという不具合があった。しかし計算が間違うわけではなく、帳票も問題なし。これでも日本では返品扱いになると米国開発元に伝えたところ「皿の底の傷に文句を言うな」と言われた。しかし、これが日本の品質の目線である。
  • ユーザ都合でバージョンアップできないこともあるが、辛抱強く待ってくれた国内ベンダーとは安心して付き合える。
  • システムの投資対効果は、定量把握したくなるが、実は定性把握が大切。社員のやる気、CSR向上などは定量的に図れない。社長の経営戦略に合致すれば、投資対効果は「あった」と考えられる。
  • メリットだけという仕事はない。必ずデメリットもある。

改めてわかったことがあります。国内で成功している(お客様に支持されている)パッケージベンダーは皆、"皿の底の傷" を一つ一つ、修正してきたのだということです。これは開発者の目線でいえば、不具合とは呼びたくない瑣末な話でしょう。こういうのを修正してもきりがないし、これを直したからといって評価されることもないかも知れません。

しかし結果的に、支持されているベンダーは、同じ苦労をされています。その苦労を知らずにヒット商品を抱えているというベンダーは一社もいないのです。

ジャスミンソフトも日々、試されているのだと実感します。製品を出してから今日まで、何度「ここまで修正を迫られるのか」と思ったことでしょう。開発スタッフの気苦労も知っています。それでも、パッケージベンダーになると決めた以上、この道を進むことです。それこそ一つ一つの小石を取り除きながら歩くような、気の遠くなるような作業を全員でこなしていく。その継続性こそが組織の力になり、対外的な信頼につながります。

IT はグローバル化している分野であるため、素晴らしいアイデアを思いついたとしても、世界の誰かが同じことを気付いています。大切なのはその次の一歩、わずかな差(微差)を積み上げられるかどうか、です。

パッケージベンダーで日々、がんばっている技術者に改めて、深い敬意を表します。そして私たちも、引き続き、その道を進んでいきましょう。継続こそ力です。

最後に、このような会に開発者が顔を出す機会があっても良いと感じました。皆さんの苦労を、会社のトップ陣はきちんと把握しており、その努力を無駄にしないという気持ちで製品を担いでいらっしゃいます。その背中をみることで、気合いが入ることでしょう。そういう人間関係ができあがるのは、いいことです。