意見具申:Windows XP サポート終了を契機に一石二鳥を狙う案

毎週欠かさず観ている宇宙戦艦ヤマト2199ですが、先の回での原田衛生士の台詞を真似て、"意見具申" します。

年明けの 2014 年にいよいよ Windows XP のサポートが終了するということで、多くの企業でその対策が待ったなしと言われていますが、その具体策が見えてきました。大きく分けると

  • 何もしない。(そのまま使い続ける)
  • 仮想化によって、XP の延命を図る。
  • この機会にアプリケーションを再構築する。

の3つがあるようです。私は性格的に、どうせやらないといけないことなら一石二鳥を目指す派なので、再構築を支持します。前の二つを選択する企業は、当面のコスト負担を避けるつもりで、実は失うものが大きいと考えています。

何もしない。(そのまま使い続ける)

"問題が発生しなければ、特段の経費は発生しない。" ということはありません。少なくとも、これだけのリスクを背負うことになります。

  • 今後発見される XP のセキュリティホールをついた攻撃によるハッキング、情報漏洩の可能性に常に怯えること。疑わしい事象が起こるたびに社内の調査コストが発生し、通常業務に支障をきたします。
  • 従業員のやる気の減退。自社は相変わらず XP を使い続けるということを前向きに受け止める人はいません。すでにスタートラインで他社に遅れをとったという心理的な敗者意識が芽生えることにもなります。
  • 競合他社が業務システムを刷新していた場合、その後の成長性にも影響が生じることでしょう。

つまり問題が発生したときの事後的対応経費だけではなく、自社は対応しなかったという心理的負担が組織の呪縛となり、結果として見えないコスト負担を社員に強いることを懸念しています。

仮想化による延命。

もっとも避けるべき選択肢です。なぜなら、このコストは本来、必要のなかったものだからです。さらに、自社の IT を改善できるせっかくの機会をみすみす逃すことになり、新しい環境(スマートフォンやタブレットといった新技術への適応など)といった点でも競合他社に遅れをとります。

この延命策に投資するより、XPをさらに半年から1年、使い続けると決めて、それまでの間にシステムを刷新する方が良いです。その方が成長への可能性を持てますし、期間限定での延長なら従業員も納得できることでしょう。むしろ延命されて、まだしばらく XP を使う(つまりその上で動作する旧式の業務アプリケーションを使い続ける)ことの方が、企業の活力を阻害します。

アプリケーションの再構築。

XP の終了を、自社アプリケーションの見直しに結びつけるのが一石二鳥の基本路線です。すべてのアプリケーションを一気に置き換えることは現実的ではない、ことを踏まえれば、この機会に「アプリケーションの棚卸し」ができます。使っていないアプリケーションを洗い出すだけでなく、そのアプリケーションが支えてきた業務フローそのものの見直しまで視野に入れれば、一石三鳥にもなります。きっかけがなければ、業務フロー見直しは、なかなかできないためです。

そして再構築の範囲を決めたら、次の10年のアーキテクチャを見据えた開発を目指します。具体的には特定の OS に縛られないことを目標に、HTML 5 ベースの Web アーキテクチャを基盤に選択することを推奨します。そうすれば同じアプリケーションがPCでもタブレットでもスマートフォンでも操作できます。一石三鳥を超える発想です。

もちろんコスト負担はありますが、これが王道です。Windows XP 時代に開発した業務アプリケーションは、VB 6 系が多いでしょう。おそらく10年は経過しているはずで、とっくに耐用年数を超えています。当時の開発チームも解散しており、保守もままならないかも知れません。パフォーマンスや、追加機能の実装の困難性などを考えれば、再構築のよいきっかけです。ここで再構築を行うという選択をした企業は、次の成長の機会を逃さないはずです。

まとめ

XP の終了まであと XX ヶ月という数字に縛られて早々に諦めたり、延命策をとるのではなく、これを機会に、困難であっても再構築の計画を立てることが上策です。仮に XP のサポート終了時点を(多少なりとも)オーバーしてしまうことがあったとしてもかまわない、というのは言い過ぎでしょうか。今回の投資のゴールをマイクロソフト社のサポート終了期限に間に合わせることではなく、これをきっかけに自社アプリケーションをバージョンアップさせ、成長のエンジンにすることと見なした方が、より健全であるという考え方が根底にあります。