Biz/Browser がエンタープライズアプリケーション開発市場で異彩を放つ、たった一つの理由

さった11月29日、東京・品川で開催された「Biz/Browser Re:Style Day 2013」に参加してきました。
http://www.sbbit.jp/eventinfo/18412/

Biz/Browser とは「ビジネス向けに特化した専用ブラウザ」というソフトウェアで、1999年の登場から間もなく15年になろうとしています。Visual Basic や Access で開発されたクライアントサーバ型と同じような画面を専用のエディタで開発すると、HTTPを経由して Web サーバと接続できるという仕組みを提供します。Web サーバ側の技術は問わないため、さまざまな業務アプリケーションのフロントエンドとして活用できます。

発表では、iPad 版や Android 版がお披露目され、これまでの PC 版やハンディターミナル版とあわせ、多くのプラットフォームで活躍できることが大々的にアピールされました。

そのような中、私の目は一つのデモアプリケーションに釘付けになりました。それは Windows 98 で動作する Biz/Browser でした。*1

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驚いたことに、このバージョンで動作していた Biz/Browser の画面定義情報(CRSというスクリプト言語) は、最近のバージョンの Biz/Browser で「そのまま」動作するのです。これは何を意味するのかというと、Windows 98 時代に開発した利用者向けの業務画面は、その後にOSを入れ替えても、Webブラウザ(IE)のバージョンが変わっても、Biz/Browserをバージョンアップするだけで使い続けることができたということです。

私はここにBiz/Browserが提供する、他社に真似のできない価値を見出しました。

日本のユーザ企業は、ハードウェアやOS、IEなどのブラウザのアップデートによって自社システムを作り直さざるをえなくなることが理不尽だと感じています。開発側にとっては特需 - 例えば今回の Windows XP サポート終了は旧システムをつくり直すよい機会 - なのですが、ユーザ企業にとってはそうではありません。機能拡張でないシステム修正は避けたいという気持ちが強いのです。

Biz/Browserはまさにこの点を保証します。Windows XP を別の OS に変えても、Biz/Browser で開発した業務画面は同じように使い続けることができます。システム更新費用が発生しないわけです。

そして今、同じコンセプトを PC だけでなくタブレットやスマートフォンにも広げようとしています。そこに魅力を感じるユーザ企業は多いことでしょう。運用され続けるほど、Biz/Browser のファンは増えるはずです。

Biz/Browser と Wagby の連携

実は Wagby も同じコンセプトを持っています。それが「アプリケーションの設計情報があれば常に最新のアーキテクチャ向けのアプリケーションを生成する」というものです。

初期の Wagby はシンプルな HTML 部品だけを使っていました。それがバージョンアップのたびに CSS や JavaScript といった(その時代の変化にあわせた)技術を取り入れていきます。最新版は HTML5 というアーキテクチャに照準をあわせています。生成されるプログラムの形は変わりますが、アプリケーションの設計情報は再利用できます。

Wagby も Biz/Browser と同じように業務画面を生成しますが、OS やブラウザのバージョンアップに合わせるため、利用者の使い勝手は少しずつ変わっていきます。つまり Wagby は「最新のWeb環境に合わせる」ことが強みなのに対し、Biz/Browser は「変わらないこと」が強みなのです。

これはどちらがよいか、ではなく、製品思想が異なるため、ユーザ企業の選択肢が増えていると考えた方がよいでしょう。そしてこのような違いのため、Biz/Browser と Wagby の連携は大いに可能性があります。「変わらない業務画面」と「最新アーキテクチャに自らを変化させるサーバサイド処理」の組み合わせです。

  • すでに Visual Basic や Access を用いて運用していた画面があり、できるだけこれに合わせたい。しかしすべてではなく、例えばマスタ管理系の画面は Wagby が自動生成したものを使ってよい。このようなケースでは従来の画面を Biz/Browser でデザインし、Wagby はマスタ管理ならびにサーバ側の業務処理に特化します。いずれも超高速開発という分野に位置するため、開発効率を上げつつ、保守性も高まるという利点を享受できます。
  • 画面設計も新規に行うが、Webブラウザだけで本当に自社の業務画面が実現できるか不安であるという場合、まずはWagbyだけでシステムを作ってしまうというアプローチもあります。そこで現場の方と意見交換しながら、いくつかの画面(毎日使うもの、タブレット利用時にオフラインで操作したいもの、など)をBiz/Browserで作った画面に置き換えるという方法です。システムそのものは早期に完成させつつ、運用しながら改善していくことができます。

Wagby は年明けに公開される R7 より、REST API に対応します。これを使って Biz/Browser との連携を試したいと考える方は少なくないようです。私もとても興味のあるアーキテクチャなので、実現を楽しみにしています。

*1:写真は片貝システム研究所さんからお借りしました。ありがとうございます。