創業から20年を迎え、次の10年を模索する

ジャスミンソフトは2001年3月14日創業です。おかげさまで19年が経過し、20年目に入りました。これまで私たちに関わり、そして現在も支えていただいているすべての方々に感謝します。

当社は私の意向で、特にこのような記念日でのイベントというものは行っていません。その代わり、今年は主力製品である Wagby と住所正規化コンバータのメジャーバージョンアップ計画があり、その実現に集中しています。製品発表会が会社のアピールの場、と位置付けているので、創業日は毎年、単なる通過点として過ごしています。

とはいえ、こういうのは「振り返り」と「抱負」を考えるきっかけになります。この機会に、現在の心境を整理してみました。

振り返り

ベンチャー企業が自社製品を開発し、それで会社を運営できるようになるまで、少なくとも10年はかかることを実感しました。当社の場合は紆余曲折もありまして、15年を要しています。その経験から、私たちよりはるかに規模の大きな組織が、流行りの技術に手を出すものの売上が思うように伸びず、2-3年で撤退してまた別の技術に手を出す… というサイクルは短過ぎると感じるようになりました。かといって10年以上、一つの技術にこだわって投資を継続することが必ずしも良いかというと、もちろんそんなことは言えません。結局のところ、誰かに語れる成功の方程式などは見つかっていませんが、ひとたびビジョンを掲げてそれを成就させるには、相応の時間がかかるのだ、ということが私にとっての学びです。

それだけではシンプルすぎるので、私が日々、経営に際して意識していることを箇条書きで整理してみました。

  • 私に権限と責任を私に集中させることで、誰かのせいにしないこと。
  • 私のチームと呼べるだけの、小さな組織であること。
  • 私はリーダーであるが、一緒に働く人を評価するのではなく、チームの成果も悩みも分かち合える戦友として接すること。
  • 私の「やる気」を高める、あらゆる人、イベントに敬意をもって接すること。
  • 私の「やる気」を削ぐ、すべてのものから積極的に遠ざかること。
  • ライバル企業の良いところを羨むことなく、自分たちがやるべきことを着実にこなすこと。
  • 売上が小さい状況でも支援者に満足いただけるため、成長の可能性を常に示すこと。

改めて文章化してみると、7つありました。特に目新しいこともない...ですが、売上とか成長率とかを指標にしていないというのは正直に告白しておきます。数字は意識していないわけではありませんが、数字を絶対的な指標とみなしていれば、おそらく Wagby を続けることは難しかったことでしょう。もはや私にとっては経営者として成功したいという欲求よりも、自分が掲げたビジョンを達成できるかどうかに重きをおいた経営判断が常態化しています。例えば上場、という意思はもうありませんと公言しています。その代わり、ビジョンの達成のためにできることは何でもしたいです。

ちなみに創業時はもっとガツガツとして、数年で成功しなければベンチャーではないし、できれば上場もしたいと息巻いていました!今思えば青臭いですが、その根拠なき自信は、スタート時にはしかし大切な財産だったのだと、今は懐かしくさえ感じます。同じような無鉄砲さは逆立ちしてもでてきません。

今後の抱負

「会社の寿命は30年」という定説があります。すでに3分の2が経過した今、あるいはそうかもしれないと考えるようになりました。

創業したときには、IT業界に関わるものとして、システム開発にかかわる多くの問題点を解決したいという野心がありました。もちろん今もその火は消えていませんが、一方、社会の変化に伴い、問題そのものが変質してきたことも事実として受け止めざるをえないこともあります。

一例をあげると、システム開発の内製というテーマがあります。20年前、企業のシステム開発の中心は SoR に関するもので、それらは SIer が開発することが当たり前でしたが、トラブルも絶えませんでした。そこで発注者自らが内製しやすくなることを期待して Wagby をつくってきました。この視点は今も重要であることに変わりはありません。(2020年になってもなお残念なことに、この手のトラブルはあちこちで生じています。)

しかし企業のシステム開発は SoR から SoE にシフトしています。一言でいえば、どのような業種・業態であっても等しく、ソフトウェア企業として生まれ変わろうとしています。そこでは内製が当たり前とみなされるようになり、SoR で論じられてきた問題自体が大きく変わってきました。その動きにあって Wagby の意味もまた、変わらざるをえません。SoR 中心から、SoR と SoE の架け橋として、さらに SoE でも役に立つ存在として常に自分自身の意義を見直すことが求められています。

ここで SoR だけに固執すれば、ちょうど会社寿命30年と同じ時間軸で、Wagbyもなくなっていくのでしょう。そうならないようにするために、SoR 中心だった社内文化や技術ノウハウを SoE にシフトしていけるかどうかが問われています。この変化を受け止め、取り込み、その上で当社としての独自性を発揮できる点を見つけることができるか、を挑戦し続けるような10年を目指したいと思います。

まとめます。19年の蓄積におごらず、気を緩めることなく、かといって悲観することもなく、淡々とやるべきことをこなしていきながら、時代の変化に敏感でいようとする。そんな毎日を、20年目の明日もまた実践していきましょう。