組織の構成要素は人ではない、から出発する IT 論

ビジネスプロセス革新協議会での渡邉 信光氏の論文「組織の構成要素は人ではない! 」に大いに刺激されました。
http://b-p-i-a.com/?p=709

人は組織の構成要素であるならば、人は組織の一部分(部品)なのか?

人は組織の歯車ではないという思いから、私自身、この問いに対する答えを模索してきました。この論文で紹介されているニクラス・ル―マンの理論によると、

社会の構成要素は「コミュニケーション」だけである。つまり、人は社会の構成要素ではない

ということになります。

「社会とは何か」と問われれば、それは「コミュニケーションの連鎖」であるとル―マンは言い切る。

この考え方を元に、発展させてみます。企業組織におけるコミュニケーションは「社員同士」「社員と顧客(見込み顧客含む)」に大別されます。そうすると良い企業文化とはコミュニケーションの活性化を促す方向にエネルギーをかける風土がある、と言い換えることができそうです。

ただし、"飲みニュケーション" といわれる手法には限定させないようにします。これはストレス発散と違う視点で話を進めるためです。

コミュニケーションという視点から、社員の人事評価につなげることはできるでしょうか。組織では、与えられたテーマをこなすことだけが社員の役割ではありません。コミュニケーションの連鎖を活性化するために、

  • 企業のゴールに合致した情報を積極的にみつけ、共有する姿勢をもつこと。
  • 相手にわかりやすく説明できるプレゼンテーション力をもつこと。
  • ネガティブな情報であっても、これを晒してチームのやる気を削ぐのではなく、恊働の意欲を高めるような姿勢に転じるような工夫をすること。
  • 一方的な通知・通達ではなく、相手の理解を得るような行動を起こすこと。

といった活動を日々、行っているかというのが企業にとって有望な人材とみなすことができそうです。

この考え方を前提にすれば、企業の IT 化はメールやグループウェア、企業内SNSといった情報流通のためのインフラを提供するだけでは不十分なことは明白です。コミュニケーションの連鎖を促すための制度(仕組みづくり)があってはじめて、これらのインフラが役に立ちます。

「コミュニケーションの連鎖に貢献する」「自分の貢献が役に立ったことを見える化する」「社内外から評価される」といったプラスのスパイラルをつくり、発展させていくこと。IT は情報を正しく相手に伝え、貢献を見える化し、かつ過去の情報履歴を検索できるようにするといった面を支えることにうってつけです。IT なしでは、このような仕組みを支えることは不可能ともいえます。

これまで Wagby で開発されたアプリケーションは「業務データの管理」という面が強いですが、今後はコミュニケーションの連鎖を促すような *しかけ* を導入することで、使うことが楽しくなる業務アプリケーションを実現することに貢献できないでしょうか。さらに深堀りして考えてみたいテーマです。