日経コンピュータ「オルタナティブSI」への補足 - "自動生成SI" には4つのビジネスモデルがある

今回の特集記事はとても楽しみにしていました。Wagby の事例としてソフトウェア・パートナーの寺田社長が紹介されていたことはもちろん嬉しいのですが、それ以上に「一括請負・人月見積・多重下請」に変わるビジネスモデルの具体例を知りたいと期待していました。

記者の浅川さんの思いが、ここにあります。

「多重下請けは本当に必要悪なのか」から1年、見えてきた新SIモデル
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/watcher/14/334361/012900174/?ST=system&P=1

"自動生成SI" の可能性

詳細は本誌の記事をお読みいただくとして、私の第一印象は、大規模基幹系で適用できるのは "自動生成SI" だということです。それ以外のモデルは小規模から中規模の企業向け、または事業部門によるネットサービスの開発に向いています。

"自動生成SI" の特徴を、SIer の経営者視点からみると、記事中にあった次の一言に集約されます。

自動生成SIのビジネスモデルとしての利点は、下流工程で発生しがちな開発人数のピークを平準化できる点だ。上流工程の比重が高まる一方、下流の製造工程、テスト工程に関わる人員を減らせる。このため、下請け企業に作業を再委託する必要がない。

(日経コンピュータ2015年2月5日号 pp.32)

近年「エンタープライズ・アジャイル」という概念が提唱されていますが、これも同じ特徴があります。さらに、私が幹事をつとめる「超高速開発コミュニティ」も同じことを言っています。つまり

"自動生成SI" は "超高速開発" を実現し、それは "エンタープライズ・アジャイル" の一つの具体例

となっています。3つのキーワードは、オルタナティブ SI の帰結です。

"自動生成SI" が実現する4つのビジネスモデル

本題です。この記事では "自動生成SI" と説明されていますが、私はさらにこのテーマで4つのビジネスモデルを発見しています。記事に補足する形で、説明します。

タイプ 特徴 求める人材
ツール指向 できるだけプログラムを書かずにツールの機能だけで要件を実現する。既存システム連携、複雑な業務ルール、帳票、BIなどもすべてツールを使い、ツールの組み合わせでシステムを構築する。 各ツールの専門家
高生産性開発 自動生成率 80〜90 パーセントを目標とし、残った部分は従来型の開発方式と組み合わせて実現する。現在のSIの延長としてもっともわかりやすい。 ツール専門家と、ツールが生成するコードをカスタマイズするプログラマ
テンプレート指向 業種・業態に特化した(ツール向けの)設計情報をあらかじめテンプレートとして用意する。カスタマイズ性が著しく向上したERPという位置付け。 ERPを設計できる業務知識
内製支援 エンドユーザがツールを使いこなせるように支援する。ツールの使い方から、要件をどのように設計情報に展開するかをコンサルティングする。 ツール&業務コンサルタント

これはWagbyの販売代理店と一緒になって、長い時間をかけて発見したモデルです。"自動生成SI" といっても実際にはさらに自社の特徴を出すことができます。

おかげさまでこのところ、Wagbyの代理店に関する問い合わせが増えています。このようなアピール方法があることをお伝えし、どれが自社にとって向いているかを検討いただいています。

日経コンピュータへの期待

日経コンピュータ関係者には、現在のエンタープライズアプリケーション開発の悪弊を見過ごせない、次のビジネスモデルを提案したい、という風土を感じます。2012年には「超高速開発」というキーワードを打ち出されました。そして2015年は「オルタナティブSI」です。その間、SIの現場ではさまざまな取り組みがありました。今回の特集記事は、この動きを敏感に取材されていると感じます。

引き続き、日経コンピュータのアンテナに期待しています。個人レベルで「おかしい」と思っていてもなかなか言葉にならないことを、うまく取り上げてこのようにまとめていただけるのは記者の力です。

少なくともWagbyに関わっている方々の目線では「一括請負・人月見積・多重下請」はリスクであり、変えたい、変えることができる、という気持ちをもっています。せっかく立ち上がったこの芽を、大切に育んでいくのが当社の責務であり、重責であることを承知の上で、大変なやりがいを感じているところです。

(追記)

きたる2月20日に「超高速開発での「設計」を考える 〜楽になること、ならないこと〜」というセミナーを行います。
http://www.x-rad.jp/

"自動生成SI" を考えるきっかけになればと願っています。ぜひともご参加ください。セミナー第一部で語っていただく、渡辺さんのお話、とても楽しみにしています。
http://watanabek.cocolog-nifty.com/