2004年5月にWagby(当時の製品名は JasmineSoftHarvest)の R3.0 を一般向けにリリースしました。沖縄で製品発表会を開催し、いくつかの全国メディアにも掲載されたことで幸先の良いスタートを切ったと喜んでいたことを思い出します。その後、製品名を Wagby に変更し、東京に事務所を構えて営業活動に本腰を入れました。あれから20年、2024年はいろいろな棚卸しを行うタイミングのようです。
販売パートナーのこと
20年前、Wagbyは説明の難しい製品でした。市場自体がとても小さいため競合製品も少なく、どうやって市場でアピールすればいいのかを試行錯誤するしかありませんでした。それでも、東京にきたばかりで人脈もなく、実力もはなはだ疑わしい、ただ威勢だけよくみせていた(はず)の無名企業を応援してくれた人がいたのです。日本は概してベンチャーに冷たいと言われますが、実体験からは決してそういうことはありませんでした。
初期のころから応援いただけたパートナー企業の一つが、当時、東京・新宿にあったソフトウェア・パートナー社です。社長であった寺田氏に、製品への思いや将来性を熱く語ったところ、気に入られました。同社経由でWagbyを導入いただいた組織は100を超え、私にとって寺田氏は大恩人になりました。その後に設立したWagbyユーザ会では、毎回、挨拶をお願いする間柄になりました。
その寺田氏が数年前に同社を離れたあと、体制が変わってこのたび、同社のWagbyチームが別の会社に移ることになりました。銀座に拠点を構えるアベール・ソリューションズ社です。
availsolutions.co.jp
これまでの歴史を考えると寂しくもありますが、しかしすべてが同じように続くわけではありません。主要メンバーがそのままアベール・ソリューションズ社に移ってWagbyに関わっていただけるということは幸いです。同社は上流に特化した会社なので、Wagbyとの相性もよく、これからの協業を楽しみにしています。
株主構成のこと
もう一つの変化は株主のことです。8年前の2016年、当時、東京システムハウス社にいた清水氏がAIと超高速開発に特化した新会社アライズイノベーションを設立しました。その枠組みでアライズイノベーションの出資会社である東京システムハウスならびに日本紙パルプ商事も私たちに出資するということとなり、沖縄から出発したジャスミンソフトは、日本紙パルプ商事という歴史ある大企業のグループの仲間入りをしました。
それから8年、特にコロナ禍のときは大きなグループにいたことの安心感もあり、資金繰りに窮することもありませんでした。ただ、当初想定していたシナジー効果は残念ながら得られないことがわかったため、このたび東京システムハウスならびに日本紙パルプ商事は当社株主の役割を終えることになりました。これもまた寂しくはありますが、一方でアライズイノベーションとの関係は強化され、清水氏にはジャスミンソフトの取締役として私とともに運営に関わってもらっています。当社の規模を考えると、預かる資本金が大きすぎたところもあり、お返しすることで(一周回って)適切な規模感に戻ったと考えています。
Wagby Developer Days のこと
きたる10月23日から25日までの3日間、ジャスミンソフトは幕張で開催される Japan IT Week ブース内に出展します。そこで毎年恒例の Wagby Developer Days を開催します。
今回は祝・20年として、Wagbyに関わっていただけているパートナー様やユーザ様と、私の対談イベントを行います。Wagbyの事例発表よりも広い視点で、エンタープライズシステム全般のことや、これからはじまるAIの活用などについても意見交換したいと思います。
これまでWagbyに追加されてきた機能はほぼすべて、ユーザーの声を反映したものでした。私にとって日本の業務システムで必要な要件を詰め込んでいった結果が今のWagbyです。今回、改めて各社と対談することでその原点を確認しつつ、未来のアイデアのネタを仕入れる機会にしたいです。
継続できた、の先へ
ジャスミンソフトは創業以来、規模を追わず、Wagbyと住所正規化コンバータを長く開発・保守できる体制を維持することを優先してきました。これは結局、私自身の資質と能力の範囲でやってきたことの裏返しでもあります。上場するようなベンチャー企業にはなれませんでしたが、継続できたこと、そして使い続けるお客様の声を聞いてきたことが当社の文化であり、存在意義になっています。
今、ローコード開発市場はマイナーからメジャーへと様変わりし、国内で入手できる製品は30を超えるようになりました。大手の参入により認知度は上がったものの、選択肢が多すぎてお客様は判断に迷うところでしょう。
ところが、これだけローコード開発が認知されているにもかかわらず、「データ中心」で業務システムを把握するということは主流になっていません。私にとってWagbyとはデータベース中心の業務システムを実現するツールであり、根本的にデータ中心でのデザインができなければWagbyの価値もアピールできないと考えています。
ということで20年を迎えたこれからも、積年の課題であるデータベース中心の業務システムデザインを展開していく、というミッションを引き続きやっていきます。