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東京海上日動火災が実践している「アプリケーションオーナー制度」は夢物語か

先日の「システムイニシアティブ研究会」では、東京海上日動火災様(以下、敬称略)の「アプリケーションオーナー制度」が紹介されました。これは要約すると次のようなものです。

もっとも会社で稼げる人材層(30歳から40歳)を通常業務から切り離し、社内で開発対象となっているアプリケーションの "オーナー" として仕様策定、開発側との交渉などにあたってもらう。

これはプロジェクトリーダーではありません。納品されるシステムの仕様を熟知しているユーザー企業担当者です。さらにいえば、仕様のあいまいさを確定できる人でもあります。

同社では、この制度を支えるためにさまざまな工夫を行っています。

  • アプリケーションオーナーは最終的に(このシステムを)どう使うかという利活用に責任をもつ。(どうつくるか、はベンダーが考える)
  • アプリケーションオーナーは操作マニュアルを作成する。つまりシステムテストを行うということ。業務の例外処理を知っていなければ、マニュアルは書けない。
  • 議事録はすべて開示し、社内のシステム監査の対象になる。議事録が貧弱だと、すぐに監査で指摘される。
  • 新システムの開発要望は、部長級会議の場で決める。このとき、実際の現場担当者が部長に代わってプレゼンすることは許されない。必ず担当部長が自分の言葉で、新システムの重要性を語る。他の部長が納得できなければゴーサインは得られない。
  • システム開発時においては、常にこのシステムが「経営管理の高度化」に資するかどうかを問う。(単なる事務作業効率化ではない)
  • IT に関連した人事管理を充実する。(例えばCIO 職の経験者を社長に据えるという風土になれば、アプリケーションオーナー担当者は出世コースと解釈でき、モチベーションが上がるだろう。)

つまり同社のシステム開発は「目的を明確にし」「他部署の認知を得て」「(ほぼ)専任者が仕様の責任を持ち」「妥当性について常に社内の監査を受ける」ということです。監査報告に強制力こそありませんが、開発を継続するかについて一定の影響力を持っているとのことです。

さて聴講者からは、賛同と、諦めのコメントが半々でした。最も多いと感じたのは、次のようなものです。

これは理想的な体制である。この社内風土をつくるのに数十年かかったということは賞賛に値する。しかし当社では、とても真似できないだろう。

しかし、せっかく貴重な時間を割いて勉強会に出席したにもかかわらず、敷居が高いといって変化を避けるのは、あまりにも「もったいない」ことです。本当に真似できないのかどうか、思考してみましょう。

アプリケーションオーナー制度の本質は何か

仮に東京海上日動火災と同じような制度を導入しても、続かないだろうと思います。制度の本質を突き詰めずに形だけを追っても、"仏像を作って魂入れず" という状態になりがちです。彼らが数十年かかって築き上げた制度の、核となる部分を自社に移植できるかどうか、これが鍵です。

この制度の核(本質)を私なりに解釈すると、「自社システムの開発を丸投げしないという意識を社長以下、全社員で持てるかどうか」です。これは

開発するシステムの出来の最終責任は、発注側にある。

という態度を明確にしています。

言い換えると、"ITについては素人だから..." と仕様策定からベンダーに丸投げし、出来上がったものをみて "こうではない" とクレームをつけるという構図では、結局ユーザー企業が損をするということを知っている、ということです。

振り返ってみますと、企業の IT 化は「1. 紙伝票をデジタル化する時代」「2. 著名なパッケージソフトを導入して(他者が用意した)ノウハウを使う時代」から「3. 蓄積されたデータをどう活用するかを企業の競争力の源泉とする時代」へ変わっています。システムに正解はなく、最初から仕様を決めることも難しい。よって

利用者(ユーザー企業)が日々、試行錯誤しながらシステムを改善していく。

ことが求められています。そのときに仕様理解があいまいだと、改善はおぼつきません。仕様策定を外部に丸投げしてしまえば、改善スピードも上がらないでしょう。そう、そのとおり、そういう文化を我が社にも植え付けたい!という気持ちをもつことが原点になるのだと思います。

アプリケーションオーナー制度の導入で期待できる効果

制度の細かい点はさておき、「自分たちのシステムの仕様は自分たちがしか決められない。」と意識することは、企業規模の大小を問わず実現可能です。さて、そういう人が集まって社内のシステム全体を議論するとどうなるか。発表の中では「システム(または企業の業務)に対する "思想、哲学、理念" をもつ」という発言がありました。これが企業のコアであり、競争力そのものにつながるのだと思います。

ベンダーはそれを実現するための手段を提案しますが、理念そのものを提案することはありません。これはユーザー企業がしか見つけることができないものです。

まとめ:アプリケーションオーナー制度はコスト削減の方策ではない

私の理解では、アプリケーションオーナー制度は開発費を削減するとか、納期を守らせるといったノウハウ手法ではありません。"結果的に" そういう効果がでてくることはあるでしょう。しかし真の目的は、これからの企業の存続には基盤となるシステムのコントロールを自分たちが行うのだ、という意識をもった(会社を支える)人材を育成することにあります。

その対極ともいえるのが、企業システムのアウトソーシングではないでしょうか。これによって目先の開発費は削減できたかも知れませんが、自分たち自身が業務フローを語れなくなってしまったのでは、変化のスピードが早い経営環境の中で、改善もままなりません。そういう視点から、アプリケーションオーナー制度は自社の強みを取り戻すために重要なアプローチだと解釈しました。

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