GAPS第二回全国「車座会」に参加して

さった22日、プライドの三輪さんからの紹介で、自治体情報化推進の在り方を議論する「GAPS車座会」に参加してきました。
http://gaps.or.jp/kurumaza002_PR/

GAPSとは "Governance Architect for Public Sector" の略で、全国の自治体の情報化を支援する団体です。
http://www.gaps.or.jp/

高座にざぶとん、という形で円をつくり、各コメンテーターがそれぞれ意見を出し合いながら議論していくという、刺激的な雰囲気でした。会場との意見交換もあり、盛り上がりました。

以下の報告は私の参加メモに基づくものですが、発言者の真意ではない解釈をしている可能性もあります。あくまでも私見に基づく参加報告ということでお読みください。

自治体職員から業務知識が失われつつある現状

1980年代まで、自治体は職員自ら(行政業務のための)アプリケーションを構築していました。しかし1990年代以降、パッケージ化の推進により「丸投げ」化が進みます。職員が自らの業務知識を持たなくとも(ブラックボックス化されたパッケージにより)対応できるようになったのです。しかしその影響で、自らの業務知識が失われつつあるという報告がなされました。以前は"神"とまで呼ばれる業務のプロが存在していたが、それが現場からいなくなりつつあるということです。

丸投げとは業務仕様だけでなく、運用仕様にも及びます。開発はベンダーが行うといっても業務仕様と運用仕様は本来、発注側である自治体に責があります。これも曖昧になりつつあるとのことです。そのため一時的にベンダーが大変な作業を強いられるものの、その後の法改正対応などでしっかり請求されるということで、発注側がしっかりしない結果だという発言もありました。

これらは自治体の当事者意識が低いために起こることでしょうか。会場では、むしろ(当事者意識が)強すぎるのではないか、という発言もありました。自分の範囲でしか物事をみないため、5〜10年後の行政ビジョンを描くことができなくなっている。全体を見渡せる人材の育成には時間がかかるが、それも難しい。自分がいる間はリスクを先送りしようとするため、どの現場も本質的な解決ができない状態がもう何年も続いてしまっているということです。

発注仕様書については官が先行、民は追いついていない?

自治体の担当者間では、より正確な発注仕様書を書くという動機付けがあり、それを支える各種勉強会なども盛んになっているという報告がありました。ところが現状は、これを受ける民間のベンダーが追いついていないのではないかと感じることがあるそうです。発注仕様書に記載されている肝心の内容にはこたえず、「何でもやります(できます)」という決意表明書のようなものが提出されてくると閉口するということです。

また、意識の高すぎる自治体職員は往々にして実現性が乏しい、夢のような仕様を語ることがあります。しかしベンダーはそのリスクを無視して受注し、あとで実現できないというトラブルになります。これも受注側の倫理としてどうなのか、という話もありました。

自治体の業務をパッケージに合わせるということはできないのか?

自治体への新システム導入では、すでに自治体職員で業務知識を持つことが難しいため、パッケージを導入せざるをえません。そこでパッケージの動きから業務の動きを学ぼうとしますが、やってみると自分たちの業務に合わないことがわかります。わからない、ということがわかるだけ、良いのかもしれません。そのような学びをせず、すぐ運用開始となれば、パッケージシステムの出力結果を検証できないということで、エラーを見過ごすということもありえます。

では、自治体の業務をパッケージに合わせるということはできないのでしょうか。これは「難しい」という意見が大勢を占めました。同じ業務テーマでも、1800自治体それぞれ例外の扱いも異なっているためです。

例外処理をシステムに刻み込むのか、人間系で引き取るのかというのは古くからあるテーマであり、統一的な解決策はありません。個別に対応するしかないということは私も同感です。

一つの方向性は「業務リポジトリの構築」か

さまざまな意見の中で私が注目したのは

リポジトリを構築し、業務知識をシステムそのものに記述する仕組みはないのか。

というものでした。その発想はこの業界で古くからあるのですが、未だに実現できていません。(正確には当社も含め、さまざまなアプローチがあるのですが、まだ発展途上です。)

しかし今回、議論されたさまざまな問題は、何かを学べば・購入すれば解決するという安易な発想ではなく、しっかりとした体系の中で解決されることが王道と考えています。その実現を支援するために、業務知識を(プログラム言語とは違う形で)システムに記述するという仕掛けは十分に魅力的です。

大量データの扱いや、クラウドデバイスの登場はいずれもハードウェアの進化に助けられています。しかしソフトウェア、特にシステム開発の部分は数十年前からあまり変わっていません。この部分の技術的なブレークスルーなくして、問題の解決はない、と改めて感じた次第です。その分野に関わる一人として、しっかりと役目を果たしたいと思います。