週刊BCN - 潮目が変わるソフト開発「プログラミングをなくせ」に Wagby が紹介されました

週刊BCN 2013年10月14日号 Vol.1501 に見出しの記事が掲載されています。ご購読されている方は是非、お読み下さい。
http://biz.bcnranking.jp/wbcn/index.html

ソフトウェア開発の潮流が変わろうとしている。手組みのプログラミングを極力排除し、業務ロジックの記述のみでアプリケーションを生成する動きが本格化してきた。これまでの手組みのソフト開発のボリュームが一気に縮小する可能性もある。変革の火つけ役になっているのは、スマートデバイスの業務活用が急ピッチで進んでいる状況だ。スマートデバイス用アプリでは「つくらない開発」「納めない開発」があたりまえになる日も近い。ソフト開発最前線で何が起きているのかをレポートする。

実は先だって、週刊BCNの安藤記者が当社にも来社され、私と90分ほど意見交換しました。そこで気付いたのは、業界を取材されている記者から見ても、ツールの進化によるアプリケーション生成というスタイルが流行する機は熟しつつあるという感覚をお持ちであるということです。この記事ではジェネクサス・ジャパンの大脇社長と、私のコメントが掲載されていました。私の部分だけ転載させていただきます。

ジャスミンソフトが開発する「Wagby(ワグビィ)」もジェネクサス同様に、業務特化型の開発言語によるノンプログラム派のツールだが、ウェブアプリケーションの自動生成に特化しているのが特徴だ。業務アプリの主流はウェブ型であることを踏まえて、「スマートデバイス時代でも、業務アプリは維持運用コストの割安なウェブ型が主流になる」との考えにもとづく。ソフト開発の自動化の追い風を受けるかたちで、230社あまりのユーザーを獲得、向こう2〜3年で1000ユーザー規模への拡大を見込む。

補足しますと、この記事の主旨がスマートデバイスとなっており、インタビューでは私の考えをお話しました。ジェネクサスのように「ネイティブ」アプリケーションを生成するタイプと、Wagbyのように「HTML5」に特化するタイプの二つがあるでしょう。私はHTML5派です。iPhoneが登場した当初は同梱されているブラウザも非力で、JavaScriptの描画にもたつきがありました。しかし現在はスピードの問題も解決され、一見するとネイティブアプリケーションと差がないレベルの画面も実現できるようになりました。記事中にある "維持運用コストの割安なウェブ型" というのは、JavaScriptを学べばPCとスマートデバイスの両方に対応できるだけでなく、iOSとAndroid OSのいずれでも動作するため「一つ作成すればどこでも使える」ことによる開発費、保守費のメリットを伝えたものです。ただし、あまり複雑な機能を盛り込もうとするとデバイス間の互換性維持の労力がかかります。機能を絞ることで生産性と保守性を高めるという方針を掲げることで、ユーザーと開発者の双方にメリットがあるような仕組みを提案したい、とお話しました。

ところでこの記事では注目すべき記載があります。それはSIer最大手のNTTデータの自動化の取り組みが具体的に触れられていることです。「試験」「製造」「設計」「現行分析」の四分野で自動化を推進しており、今年度は218件の自動化事例が登場する予定とあります。私はこれまで、国内大手SIerは静かに開発現場の自動化を進めているだろうと予想しており、直接・間接的にもそのような話を耳にしていましたが、具体的な数字を紹介されていることに(安藤記者の切り込み?に)感心しました。エンタープライズアプリケーション開発は今、オフショアの活用から自動化ツールの活用へと舵を切りつつあります。是非とも大手SIerの方々に「超高速開発コミュニティ」へ参画して、一緒に盛り上げていただければと期待しています。

これまでツールベンダーは成功していない、という事実をどう乗り越えるか

この記事で唸ったのは、ツールベンダーの収益構造まで踏み込んだことです。一部を抜粋します。

ソフト開発自動化の要となるのが開発ツールだが、実はソフト開発のおよそ40年の歴史のなかで、ツールベンダーが儲かったという事実は残念ながらほとんどない。(中略)開発者であるSIerの視点でみると、開発ツールが行き詰まるリスクは無視できず、ツールへの依存度を高めることへの抵抗感はぬぐい難い。実行環境であるランタイム環境を必要とするツールなら、この環境に依存するアプリの継続開発は困難になるし、ツール特有の業務特化型言語もムダになってしまう。

指摘のとおりと思います。当社を含め各社ともその懸念払拭に力を入れていますが、そのためにはツールの売り切りではなく、ツールの開発を維持できる「エコシステム」的な発想が必要になると考えています。例えばWagbyで具体的に取り組んでいるのは、ユーザー・SIer・ツールベンダーである当社が三位一体となったユーザー会の活動です。

SIer の収益構造をどう考えるか

ソフト開発の自動化による工数削減は、プロジェクトの金額規模の減少を意味しており、そのままではSIerの売上は減少する。(中略)営業体制の見直しなど大がかりな組織改編を余儀なくされる。ツール活用のリスクとともに、SIerそのものもビジネス上のリスクを抱えるのがソフト開発の自動化の別の側面でもある。こうした課題を乗り越えれば、次の成長がみえてくるはずだ。

これもその通りです。一方で、変化の兆しというのはビジネスチャンスでもあります。

真のイノベーションとは、自らのビジネスモデルの変革を伴います。写真の世界では率先してデジタルカメラの開発に取り組んだ企業がありました。紙が電子インクになると言われたとき、印刷業界トップの企業は自らデジタル化を推進しました。自動車業界ではこれまで避けていた自動運転というテーマに積極的に関わろうとしています。そのような事例はいくらでもあります。変革の波を活かすことができるかどうかは、考え方次第です。

私がイメージするSIerの近未来は、これまでのような手組み開発チームは "一品もの対応" として維持されますが、一方で "どの自動化ツールを使いこなすことができるのか" という、ツール習熟ノウハウによる競争が幕を開けるというものです。数十種類の自動化ツールが登場し、それぞれ得意分野を伸ばすことでしょう。大手SIerは複数のツールを使いこなすところも登場します。これによって「人月単価の(低価格)受注競争」は終焉を迎え、ツールが一種の「開発工法」として普及していきます。日本が率先してこの変化を取り込むことができれば、SIを輸出産業にすることも可能になります。オフショア開発の逆で、開発ツールを使いこなせる、高い生産性を実現する技術者が海外で活躍するのです。それがSI産業の高度化です。

ツールベンダーとして活躍することを決めた私たちの責任は重大です。オープン性があり、カスタマイズレベルも高く、価格もリーズナブルな開発ツールを提供することができるか。道のりが険しいほどやりがいもあり、そして達成は不可能ではないと考えています。この記事への取材に参加させていただくことで、そういうことを改めて感じました。