資本家(株主)と会社の関係を変えること

このところ、米国発の金融恐慌のニュースが産業界を覆っています。米国にとって基幹産業の一つが消滅するという事態は確かに異常です。しかし物事は常に良い面と悪い面の両方をもっています。この状況をどう捉えるか、私の考えを整理したいと思います。

資本主義とは「資本」が中心ですから、資本に対して高い利率が設定されるような構造になることは否定しません。しかし、高い利回り(配当)を要求する声におされ、無理な(バブル的な)状況が定期的に発生することを私達は体験してきました。ものづくりにこだわる立場から言えば、金融商品というのは富が富を産むゲームにしか見えません。社会構造をゲームとして位置づけることは危険であり、生産的ではありません。

私はこの機会に、改めて実体にあった「資本主義」へ戻ることが望ましいと考えています。そうなると高い金利というのは当然、一部に限られる事象になります。それによって真の「目利き」が育成されるのではないでしょうか。

もう一歩進んで、資本家(株主)と会社の関係にも変化が訪れることを願っています。資本の利回りは重要な指標ですが、資本家に対して、お金以外のリターンを提供することは滑稽な話でしょうか。「儲かるからこの会社に投資する」ではなく「この会社のこういう役割が好きだから、この会社を応援する」という関係を築くことができれば、株主と会社は「社会を変革するという目的を共有する同士」になります。すでにいくつかの会社でこのようなチャレンジに挑んでいるところがあるようですので、この動きがもっと広がると良いのではと思っています。

さて、もし当社が投資を募るとして、当社のビジョンをどのように伝えようかということを考えてみました。それは「XX 年に売上 XX 円」という形にはならないでしょう。IT 分野において安い労働力を活用するビジネスから、自動生成技術を主体とした省力化、高度化を提案するビジネスを実現すること。その活動結果の一つとして「安い給与でも仕事があるだけマシ」という社会構造を変えていくこと。このようなビジョンを共有できる人たちと巡り会うことができれば、私達の歩みを加速させることができるかも知れないと考えてみました。

もちろん現実的には、まだまだ当社がこういう話を語れる段階にはありませんのでここはあくまでも夢想(妄想)です。